【小説】vitaminX B6
□始まりの一歩【一ルート】
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「……きーよーはーるーくーん!!」
怒った声がバカサイユの玄関から聞こえた。
「みんな、入るわよっ!」
どれだけ怒っていても、律儀に一声かけるところが先生らしい。
バンッと荒々しく扉を開けて入ってきたのは、ねこにゃんの肉球みたいな可愛いピンクのスーツ。
着てる人は、ねこにゃんよりもおっかないけど。
「一くん!清春くんは!?」
「清春?ここには来てねーけど。今日は何やらかしたんだ?」
先生はプルプルと、小刻みに震える拳を握りしめて言った。
「校長先生と教頭先生のマグカップに増えるわかめを……」
「あー…その後はあんまり聞きたくないな…」
「挙げ句の果てには傍らに手紙まで残して……!」
「『やさしー俺様からのプレゼントだァ!マブしーその頭をどうにかするんだなァ!?』……とか、か?」
「はぁ…その通りよ……」
先生は肩をがっくり落としてため息をついた。
「普通のわかめの50倍くらいは増えちゃって、校長室が深緑の海に……」
「そりゃー…たぶん翼だな。こないだ瞬に、わかめがどーとか、味噌汁がなんとか聞いてたし。なんか開発させたんじゃねーか?」
このとき俺らは知らなかったけど、翼が真壁財閥の開発班に作らせた
『震えるほど増えーる愉快なわかめたち』
を清春が強奪して悪戯に使ったらしい。
ちなみに『震えるほど増えーる愉快なわかめたち』は小指の先くらいの量で、バスタブ3杯分のワカメになるという画期的なワカメだという――
――が危なすぎて商品化には至らなかった。