歪みの国
□ひさしぶり!
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「アリスぅーっ」
…この声は、きっとあの子!
ガチャ
ドアを開けるとほら、
いつもの帽子。
「よぉー。アリス!!」
「いらっしゃい。帽子屋。」
「おぅ!」
私の部屋にいるチェシャ猫の首が、いつもの口調で、問いかけてきた。
「アリス、誰だい?」
「げ、猫もいるのかっ」
「当たり前でしょ。さ、上がって上がって!」
帽子屋をリビングのソファーに座らせた。
「お茶いれるね。」
チェシャ猫の首を帽子屋の隣に置き、ティーセットの用意を始める。
リビングからは、元気な帽子屋と、いつものチェシャ猫の声が響いていた。
すべてが終わったあの日から、私はチェシャ猫以外の住人を、一度も見たことが
ない。
だから、帽子屋が来てくれて本当に嬉しい。
…嬉しい。