!tgp!

□雫弥紅雛汰様へ!
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「っは!」


短い呼吸をし、体を起こせば、新聞が投函される音が聞こえた。


重い体をのろのろと立ち上がらせて、ドアに向かえば、ギシギシと悲鳴をあげる古い床。
その些細な音すらも頭に響き、思わず眉を寄せる。



やっとの思いで冷蔵庫の前に立ち、水を取り出せば、ひんやりとした感覚に思わず気持ちが良くなる。


水を飲んで乾いた喉を潤して、部屋に戻ろうとしたときだった。


ギシギシと誰かが廊下の床を踏みしめる音が聞こえた。

王子が朝食の下ごしらえでもしに来たのかと思いつつ、廊下に出る。


「アレ?大神ジャン」


少し俯いて歩いていたオレに掛けられた声に顔をあげれば、キョトンとした表情の刻が視界に入った。
まるでオレが今ここに居るのが心底不思議だというような表情。


「何してンの?こんな時間ニ」

「…関係ない」


グイッ


そのまま通りすぎようとしたオレの腕を、刻が引っ張った。
熱によって力の入らない体は、素直に引き寄せられた。


「何、風邪でも引いちゃったワケ?」

「っ、関係ないだろ!」


刻の手を振り払おうとしたオレの腕は弱々しく空を切っただけで、刻の手は離れなかった。


「強がってンじゃねぇヨ。熱もあるっショ。やっぱり真面目クンも風邪引くんだネ」

「はっ、てめぇは馬鹿だから風邪も引かねぇってか」

「ンなっ!ま、まぁとにかく部屋戻りヤがれ」


手を離されたオレは「てめぇが引き止めたんだろ」と言い返す気力もなく、大人しく部屋に戻った。
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