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□あの日の体験談
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鼓膜を劈くような蝉の鳴き声も
身体を舐め回すような生暖かい風も
ジリジリと照り付ける灼熱の太陽も
何処か遠くで聞こえる誰かの笑い声も



全てが、愛しい。






あの日の体験談







きっかけはきっと些細な事だったと思う。
はっきりと覚えてはいないけど、例えば
目にゴミが入っただとかタンスに小指をぶつけただとか
多分、そんなとても些細な事。
なのに、何故あんなに腹が立っていたんだろう。
何故全ての物事に腹を立ててしまったんだろう。


あの夏の日、何があったのか自分でもよく分かっていない。

気が付いたら暗闇の中を一人、彷徨っていた。
怖くて怖くて、人を感じたくて、音に触れたくて、走った。
走って、走って。

だけど、どれだけ走っても走ってる感覚も、何かに辿り着く気配も、音に触れられもしなくて
ただ、絶望した。
この世で自分一人しか居ない、そう思った。


怖かった次は泣く番。
端とも中央とも言えない暗闇の中一人、泣く、泣く。
何とも言えない底知れない恐怖、人肌の欠片も感じられない悲しみ
そう言うものが交ざりに交ざって涙が止まらなくなった。


何で些細な事でこんな感情苛まれなければいけないのか……。
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