!tgp!

□雫弥紅雛汰様へ!
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まだ自分の温もりの感じられる布団に体を滑り込ませると、

ガチャ――

という音と共に再び刻の姿が視界に入った。
先程と違っていたのは刻の手に水と薬があったことだった。


「何の用だ」

「しょうがねぇカラ?オレが看病してやるヨ」

「断る」

「冷たいナー。オレ超優しいのニ」

「じゃあ氷枕とか持って来やがれ」

「王子に聞かなきゃわかんねぇヨ。ンなもン」


看病とは言えない看病をし始めた刻は無理矢理オレに薬を飲ませ、早く寝ろと言い始めた。


「出てけ」

「ヤだね」


どうしても出ていかない刻は勝手にオレの横に寝転がり、あろうことか寝ようとし始めた。


「なんだ、移して欲しいのか」

「何言ってンだヨ」


……本当は心配してくれてるのだと分かっていたが、反応の仕方が分からなかった。
だから知らないフリをした。


さっき廊下で鉢合わせたのもわざわざ追い掛けてきたのだろうか――。

睡魔には逆らえず、記憶が薄れていく最中、そんなことを考えていた。
何も考えられなくなり、いつの間にか眠りに落ちていた。



次に目を覚ましたときには多少のダルさと頭痛は残っていたものの、体の熱さは殆ど引いていたようだった。

体を起こせば、おでこからぬるく湿ったタオルが落ちた。
辺りを見渡すと横に寝ている刻の姿。

起こさないようにそっと部屋から出れば、自分の顔が緩んでいるのを感じた。


珍しく引いた風邪は、心を暖かくした――。


――ドタバタッ

〈大神!!〉

突然リビングに顔を出した刻の顔は心なしか赤く、放たれた声も鼻声だった。

〈風邪引いたじゃんかヨ!どうしてくれンだ!!〉


顔が綻びるのを感じた。
今度は、オレが看病してやろう。



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