◆雛鳥◆
□#12
1ページ/6ページ
#12
皆が討ち入りに出払った後、私は廊下の隅で独り蹲っていた。
あぁああああ、もう!
私ってば気持ちが弱ってたからって、不覚にも沖田総司に縋るなんて!
しかも、ときめくなんてっ・・・。
後悔の嵐。
本当は呑気に、こんなことしてる場合じゃないんだけど、私はそう簡単に頭の切り替えが出来ない。
というか、今回で風間さんが登場するんだよね。
わわわ、どうしよう。
沖田さんが危ないよね・・・。
って、何か私、沖田さんのことばっか・・・。
―――終わりのない思案を繰り返していると、山南さんが声をかけてきた。
「姿が見えないと思ったら、こんな所で何してるんですか?」
呆気にとられた口調の山南さん。
私が振り返ると、どこか可哀想な子を見る目付きをしていた。
止めてください。
私、頭イカレてないですから。
正常ですから。
だから、そんな目で見ないでください。
―――私は山南さんに広間へと(若干強引に)連れて行かれた。
・・・まぁあのまま放置されてても、あの状態が続くだけだと思うから、
良かったのかもしれない。
「・・・私もですが、君も蚊帳の外ですね」
「山南さん・・・」
広間につき、腰を下ろすと山南さんがそんな事を口からこぼした。
どこか自嘲気味だ。
それが、何だか自分の姿のようだった。
「・・・そう言えば、森草君にはまだ今回のこと、
説明がなされていないそうですね」
「え・・・・?」
違うところに意識が行っていた私は、突然現実へと戻されぽかんとする。
山南さんが少しでも腕のことを気に病まなければいいのにな、とか思っていたのだ。
そんな私の様子に少し微笑を浮かべ、山南さんはゆっくりと口を開いた。
「私の口から説明するように土方君に頼まれました」
「土方さんが・・・?」
「はい」
私の目を見ようともしなかったのに?
・・・あの時、土方さんは何を思っていたの?
私の存在はあの人にとって、ただの厄介者なのかな・・・。
そう思うと、気持ちが沈む。
だから、山南さんに今回のことの説明を頼んだんじゃないのだろうか。
「今回の討ち入りは、昼間に巡察に行った沖田君と雪村君が、長州の間者を捕えたんです。
その間者を拷問したところ、長州派浪士が風の強い日を選んで京に火を放ち、
その混乱に乗じて天子様を連れ出そうと企んでいることが分かりました」
「は・・・はぁ。すごいですね」
知っているとはいえ、何度聞いてもすごい内容だ。
・・・本当に、そんなことを本気でしようと思っていたのかな?
だとしたら、彼らの精神構造を疑ってしまう。
「長州の間者が捕まったことで、今夜にでも尊王派が会合を行うことを突き止めました。
その場所が、四国屋か池田屋のどちらかだと分かったんですが・・・
・・・多分、四国屋の方が本命でしょう」
「四国屋ですか・・・」
「何か・・・不服そうですね?」
不服か・・・
山南さんにそう言われ、私はどう返せばいいかわからなかった。
.