◆雛鳥◆
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#11
私は、これからは山南さんと一緒に食事することになった。
―――そのことに、皆はとても驚いていた。
何故かって?
・・・だって、
他者を寄せ付けない棘を纏っていた山南さんが、
他人を受け入れたのだから。
そりゃあ、驚くでしょう。
しかも、相手が私。
何をさせても、失敗だらけの私が。
・・・言ってて虚しいけど。
「山南さんに、何も言われてないのか?」
「・・・何もって?」
只今、洗濯物を干している私。
ちなみに、洗うのは千鶴が既にやってくれた。
後は私が干すだけ。(それぐらいしか私にできることがない)
―――そこに、何処か落ち着きのない平助が遣ってきたのだ。
そんな彼に私は首を傾げ、訊ね返す。
「そりゃあ・・・酷いこと言われたりしてねぇかなぁーって。
左手負傷してから山南さん、すっげぇ近よりがたくなっちゃったし」
もごもごと言いにくそうに目を逸らせる彼。
心配してくれてるのが分かって、私は少しだけ心が躍るような気持ちになった。
「大丈夫だよ。
・・・・・・ありがと、心配してくれて。
すごく・・・嬉しい」
感謝の気持ちを口に出す最中、私は気恥しくなり、ほんのりと、
頬を薄紅色に染めらせた。
そんな私を見て、平助もどうしていいのか分からなっくなったのか、
少し顔を赤くさせ「えーっと・・・」
と誤魔化そうと言葉を呟いていた。
「あー、大丈夫なら良かった。
・・・未世は凄いな!
あの頑なだった山南さんの気持ちを動かしちゃうんだからさ!」
「・・・そんな大層なことしてないよ、私は」
全くもって本当に。
・・・ご飯をぽろぽろと、みっともなくこぼしまくっただけですよ。
こんなこと言ったら山南さんに失礼かもしれないけど、
きっと駄目な私を見て勇気付けられたんじゃないかな・・・?
もしくは、私の強引さに根負けした?
―――うーん、と独り唸っていると、パタパタと千鶴が遣ってきた。
「おっ、千鶴。どうしたんだ?」
「平助君・・・えっと、未世に伝えとこうと思って」
「え?私に」
「・・・うん。あのね、私、今日の巡察に同行させて貰えることになったの」
私に気を使っているのだろう。
言いにくそうに、そして申し訳なさそうに千鶴が告げた。
・・・でも、私は外出が出来ることに興味はなく、
それよりも『千鶴が同行する』ことに反応を示す。
あぁ―――『今日』だ。
「そっか・・・よかったね!お父さん探しにやっと行けるんだね」
「うん、ありがとう!」
「でも・・・気を付けて、ね?
沖・・・幹部の人がついてるから大丈夫だとは思うけど・・・」
「うん!それじゃあ、行ってくるね!」
私が嫌そうな顔をしなかったのを見て、千鶴は安心してその場を去って行った―――。
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