◆雛鳥◆
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トリップしてから三日目の朝です。
・・・二日三日で、監視が取れるわけもなく、今も現在進行系で見張られ中です。
千鶴はいそいそと、掃除をしているみたい。
私も手伝いたいけど、もちろん許されるわけもなく。
それに、私のこの足じゃあ・・・ね。
「はぁ・・・」
「未世ちゃん、ため息なんか吐くと幸せが逃げるぜ?」
「し・・・新八さん」
障子の向こう側から、新八さんの声が聞こえる。
今は、新八さんが見張り役らしい。
・・・平助と左之さんが私を気遣ってくれることもあって、
二人と仲のいい新八さんも私に良くしてくれる。
にしても、ほんとーにプライバシーも何もないな・・・。
声も筒抜けだなんて。
この時代のセキュリティーが案じられるよ。
・・・暇だな。
「新八さん、ちょっといいですか?」
「ん、なんだ?」
私は障子を開き、新八さんに声をかけた。
突然、私が顔を見せたので、新八さんは驚いた顔を見せる。
その表情が、成人男性にしては可愛いなとか思ってしまう。
「あの・・・そんな所で見張りも大変でしょう?
よろしければ、中でお話でもしませんか?」
「・・・え、それは」
あれ・・・ものすごく困られてしまった。
私、図々しかったかな?
割かし親切にしてくれるから、大丈夫かなって思ったんだけど。
・・・普段、私は人見知りでこんな風に自分から話しかけたりはしない。
くさくさして気が滅入ってたし、退屈だから声をかけたんだけど。
じゃなきゃ、石みたいに沈黙してると思う。
私、人に対してアグレッシブじゃないし。
「あの・・・迷惑ならいいんです。
ちょっと、お話してみたいなって思っただけですから」
「いや、迷惑なんかじゃないんだけどよぉ・・・」
口をもごもごとさせ、新八さんは閉口している。
どうしよう・・・引くに引けないこの空気。
でも、本当に迷惑って思われてるわけでもなさそう。
・・・じゃあ、何で?
あぁ・・・そうか、理由なんか簡単だ。
「・・・土方さんに私と必要以上な会話をしないように、
言われたんですね?」
「ま、まぁな・・・」
「しかた・・・ないです。
私、疑われてるんですし。
申し訳ありません、変に気を遣わせてしまって・・・」
私は、これ以上相手に気を遣わせないよう、無理やり笑ってみせた。
・・・嘘の笑顔は昔から苦手で、
頬が引き攣ってるのが分かってしまう。
私が疑わしいっていうのもあるだろうけど、多分・・・
・・・平助や左之さんみたいに私の味方(でいいのかな)を増やさないようにしてるんだろう。
「―――だぁっ!
少しくらいなら、構いやしねぇさ!」
「本当ですかっ!?」
新八さんは何かを振り払うように、頭を掻き乱して声を上げる。
彼の葛藤など考えもせず私は、
話し相手が出来たことに素直に喜んで顔を綻ばせるのだった。
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