◆雛鳥◆


□#4
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#4












一時の命の延長を得られたとはいえ、
私の暗鬱とした気分までは、晴れさせてはくれない。
それどころか、私の怖畏の心は増すばかり・・・。

和風家屋の廊下を、跛をひきながら私はゆっくりと歩いている。
目の前で揺れる、高く結い上げられた髪を、私は物悲しい気持ちで目を細め見ていた。





「未世・・・?」




私の視線に気がついたのか、平助は不思議そうに後ろを振り返る。
ハッと我に返った私は、気まずくて目を伏せた。





「どうかしたのか?」




こんな些細なことでも心配してくれるなんて、どうしてそこまで優しいのだろう。
私は怪しくて、可笑しな頭のイカれた人間な筈なのに。





「オレ、さ・・・お前が未来から来たって話信じるよ」

「―――え」





耳に心地いい音でそっと、彼は静かに呟いた。
そんな言葉が紡がれるとは思っていなかったので、
私は少しばかり目を見開く。





「・・・なんで、なんで?」

「未世?」

「私、あんなに迷惑かけたのに・・・
あんな酷い言葉を、吐いたのに!
どうしてそんなに優しくしてくれるの!?
私・・・そこまでしてもらえる人間じゃないのに!」




私の声は聞きづらいぐらいに震えてた。
心配して更には自分を信じると言ってくれた人に、こんな台詞を吐くなんて、
それこそ礼儀知らずだ・・・。
でも、だからといって、彼の気持ちが理解できない。

私は・・・力で捩じ伏せ人を斬る武士は人じゃない、とまで言ったのに。
自分のことしか考えてないような、
そんな醜い自分なのに。
それなのに―――どうして?




「お前、さ・・・俺達のこと『人じゃない』って言ったこと気にしてんだろ?」

「・・・っ」




気にしない筈ないじゃないか。
彼等の背負うものの大きさも知らずに、
あんな最低な言葉を吐いたというのに。

私は口をぎゅっと結んだ。






「そのことはさ、もう気にしなくていいって。
オレも左之さんも、気にしてないし。
・・・それよりも、オレお前に謝んなきゃいけないことがある・・・」




彼は語尾を窄ませ、表情を暗くさせていく。




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