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勢いよく家康を押し倒したが、家康が肘を付いたために完全には倒れず、上半身は起きている状態だ

痛かったのかわからないが家康の表情が一瞬歪んだが、構わずに胸ぐらを掴む手に力を込めた


「家康、また会ったな。」

「……思い出したのか?」

「たった今思い出した。貴様のことも、何もかもな。」



そう言った瞬間、家康の胸ぐらを引き寄せると家康が息を呑むのがわかった



「答えろ、貴様は何故ここにいる?」

「……ワシにもわからない。」


そう言って困ったような顔をした家康に「ふざけるな」と言おうとすると、その言葉は家康の言葉に遮られた




「だけど一つだけ知ってることがある。」

「何?」

「お前はまだ生きてる。」

「……っ!?」


家康のその言葉を聞いた瞬間、時が止まったような気がした


(私が生きている?)


そう思い、家康の胸ぐらを掴んでいた手の力を一瞬緩めたが直ぐに家康の言ったことに疑問を持ち、再び手に力を込めた

一瞬でも私を裏切った奴のことを信じ、生きているということに喜んだ自分に驚きながらも疑問を口にした



「何故私が生きていると貴様がわかる?私が生きているという根拠は何だ!?」



そう言った直後、今まで困ったような表情をしていた家康が表情を真剣なものへと変えた



「……三成、幸せか?」


突然そう言われ、意味がわからず唖然としてしまったが直ぐに何か言おうと口を開いた



「……っ、話を逸らすな!」

「頼む!これだけは答えてほしいんだ!」



真剣にそう言った家康に驚きながらも、仕方ないと思い「幸せだ。」と小さく呟き、そのまま言葉を続けた



「私は今、秀吉様や半兵衛様と共に暮らせている。昔よりは確実に幸せだ。」

「そうか。良かった。」


そう言った家康が今まで真剣な顔をしていたのが嘘だと思うくらい顔を綻ばせた



「……家康?」

「ワシは三成と共に笑って過ごせるような世にしたかった。だけどワシはお前を不幸にしてしまった。だから今はお前に幸せでいてほしいんだ。」

「何言って……」


そう言った瞬間、急に体が重くなり起きているのが辛くなった

強烈な眠気に襲われているような感覚で瞼も次第に閉じてしまう



「三成にはずっと笑っていてほしい。」

「家康…?」


そう呟いた瞬間、遂に自分の体を支えられなくなり、家康へと体を預けるような姿勢になってしまう


「三成、最後に一つだけ言わせてくれ。」


そこで初めて自分が家康に抱き締められていると気付いた

なのに全く抵抗することが出来ない


瞼も完全に閉じてしまい、家康の表情もみることが出来なかった





ただ家康の声が震えていたことだけは分かった



(泣いているのか?)


そう思っても声に出すことは出来ず、もどかしい気持ちになっていると家康が抱きしめている腕に少しだけ力をこめたのがわかった




「     」




その言葉を聞いた瞬間、私は意識を手放した
 
 
 

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