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男は何も答えなかったが今の私にすれば無言でいることは肯定しているのと同じだった



いきなり風景が変わったり、天気が変わったりするはずがない


つまり私はあの時車に轢かれてここに来たのだ



だからここは現実ではない

もしかしたら死んだ者がくる場所なのかもしれない



そう思い地面を見つめるように俯けば自然と言葉が出てきた



「私はまた死んだのか?」


自分の言った“また”という言葉の意味がわからなかったが、勝手に出でくる言葉を止めることが出来ずにいた



「今度は秀吉様や半兵衛様よりも先に。」


「どうして私はあの方と一緒に生きていけない?」


「私が何をしたというのだ!?」



「三成!」


名前を呼ばれたことで顔を上げ、振り帰ればそこにはどこか悲しそうな表情をした男が立っている


その顔を見た瞬間、視界が歪み、思わず膝を付けば今度は頭痛に襲われ、頭を押さえた



「三成!?」


男が駆け寄ってくるのが視界の隅に入ったがそんなこと気にしていられなかった


映像が濁流のように流れ込んでくるような感じだ




目の前に広がる血塗れの死体

敵を斬り倒していく自分

落ちた雷

雨の中倒れている秀吉様



そして一気に風景が変わり、さっきの悲しそうな表情をした男の顔が映像のように流れる



『みつなり』


そしてそう言った男の流した涙が頬に当たった




その瞬間、頭痛が治まりハッと顔を上げた



嫌な汗が背中を伝わるのがわかる

駆け寄ってきて私の隣に屈んだ男の心配そうにしている顔が視界に入った



(思い出した)


何もかも

秀吉様や半兵衛様のことも


そして隣にいる男のことも



「三成、大丈夫か?」

「…………す。」

「え?」

「家康。」



そう呟くと男は驚いたように目を見開いた


それを見ると同時に家康の胸ぐらを掴み、そのまま馬乗りになるように押し倒した
 
 
 

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