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□僕には君が必要だった
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現在の時刻が8時40分
部活が始まるのが9時でこのまま全速力で走っていても学校までここから15分以上かかる
(このままでは確実に遅れてしまうな。)
そう思うと同時に走るスピードを落とさずに細い脇道に入る
この道は学校への近道なのだが、大通りに出るときに見通しが悪く、事故がよく起こる道だ
本当はこんな道を通りたくないのだが、副部長の猿飛に遅刻したことで小言は言われたくないので仕方がない
今は再来週に大会を控えている大事な時期なので何時もは飄々としている猿飛も本気になっているんだろう
そしてその大会には秀吉様や半兵衛様が応援に来てくださる
秀吉様や半兵衛様は本当の親ではないが私を本当の子供のように育ててくれた恩人だ
その二人が応援に来てくださるのだから必ず優勝すると心の中で誓いながら、何気なく空を見上げた
そこにはどんよりとした雲がずっと広がっている
(雨が降りそうだな)
そう思いながら小さく溜め息をつく
何故だかわからないが昔から雨は嫌いだった
(頼むから雨だけは降らないでくれ)
そう思った瞬間だった
ブレーキを踏む嫌な音が聞こえ、音のした方に顔を向ければすぐ側に車が近づいてきていた
(ああ、そうだ……)
大通りに出る前には一つだけ車がよく通る道があったことを今更思い出した
「……ッ!!」
ヤバいと思った時には車が目の前に迫っていて、完全に動きを止めてしまった体では後ろに戻ることも前に進むこともできず、どうしようもなくなり強く目を瞑った
その瞬間、ポツッと雨が頬に当たったような気がした
(やはり雨は嫌いだ)
そう思った時、遠くか近くかはわからなかったが誰かに名前を呼ばれたような気がした