短い夢

□全ての始まり
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僕の名前は鬼龍院翔。高校2年生。


僕は今、昨日行った文化祭の喜びの余韻に浸っている。


それは何故かと問われれば、僕は昨日軽音部のボーカルとして舞台に立ち、歌を披露したからだ。


普段はあまりまとまりのないクラブだったけど、昨日は皆が団結して僕もそれなりに楽しめた。


あまり顔には自信はないし、コンプレックスだらけだけど、自分でいうのもあれだが、唯一の自慢の点は歌唱力だ。


舞台に立つのはとても恥ずかしかったが、久々に歌を披露できてよかった。


「あ、おい!翔!」


「な、なに?」


「あのさ、お前が昨日歌った時の映像、他校の奴に見せていいか?」


「え?」


「だからぁ!他校の奴に見せていいかって!」


「え、えっ…?僕が歌ってる所を…?誰かが、見たいと思ってるの?」


「まぁ…そんなところだな」


「ええええええっ!」

そんな、そんなことがあっていいのだろうか。


僕の歌声を、僕の歌っている姿を見たいと思ってくれている人がいるというのだろうか。


いや、でも僕は、この事は校内だけの話で構わないのだけれど…。


「なぁ〜!いいよな?なっ?」


「えぇ…でも、僕はこの事は校内だけの話でいいや…」


「そんなこと言うなって!翔のこと見たいって奴がいるんだって!そう思ってくれてるだけでも光栄だろ?」


「まぁ、そうなんだけど…」


「というわけで、いいよな!んじゃ、今日の放課後見せてくる」


「ちょ、ちょっと待って!その、見たい人って誰なの…?」


「あー…野球部なんだけどよ、豊って言うんだ」


「ゆ、豊?」


「そ、なかなかの男前だぜ。じゃ、またな」


「あっ!…い、行っちゃった…ったく、人の話も聞かないで!きー!」


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