駄文(北斗メモ)
□ケンレイ1(レイサイド)
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荒野の果て(レイサイド)
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『…。目を背けるな』
見据えてくるアイツの真っ直ぐな瞳に俺はあらがえない。
だから嫌なんだ……。
きつく潰った目の上で自らの視界を覆っていた腕をアイツの指が掴み上げ俺の体はビクリと反応する。
固くガサツいた不器用な指、だがとても優しく温かい。
あの手で触れられるとオレはどうしようもない衝動に駆られてしまう。
悟られたくない、俺は恥ずかしさと情けなさに口唇を噛み締めた。
『こっちを向け』
口調はいつも通りに静かで穏やかだ、だが有無を言わせるつもりはないらしい。
目を合わせなくてもアイツの視線を痛いほど感じる。
本当は気付いているくせに…。
俺がお前に安らぎを求めてしまう事、そしてお前に逆らえない事を。
ピリピリとした緊張感と一歩も退かぬアイツの気迫に俺は観念しそろりと視線を投げ返す。
外からのまばゆい光で真っ白になる視界の中にアイツはいた。
あまりない表情の中に慈愛に満ちた瞳を宿し俺の苦手な真っすぐな視線を投げ掛けている。
『……ケン』
俺はよっぽど情けない顔でもしていたのだろうか、アイツの目が哀れみを買うかの様に細められ掴み上げられていた腕はすんなりと解放され俺の許に戻される。
『準備が出来次第出発だ』
そう言い放ちきびすを反すアイツの背、服の下から肩に巻かれた白い包帯が見え隠れしている。
『……ケンッ…痛むのか?』
『…かすり傷だ』
ここはアイリ達がいる村から遠く離れた未踏の地、俺達は過酷を強いられ救いを求める罪無き者達を解放する為に旅に出た。
だが、その道中待ち伏せていた敵軍団の奇襲に遭遇し…アイツは俺を庇って手傷を負った。