malicious tale★

□アゲハ蝶
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「…様。華音様」
低く耳に心地好い声が、静かな眠りを乱す。意識が波紋を描いて、感覚を起こしていく。

「ん…っぅ」
「かのんッ!華〜音ー!」
別の声。可愛く弾んではいるが大声が気に喰わない。

「華音ってば!起きてーッ」
…ウルサイ―。
これは確実に耳元で叫んでるだろう。マジでウルサイ。いや、それで目を開けない俺もちょっと変だが。

「なんやねん。華音、また
起きんのかいな」

妙な訛りのある、明るそうな声がする。この訛り、どこかの地方と似てはいるが、彼は適当なので言葉も適当だ。全体的にはちょっと違う気もするし。

「かの〜ん?起きぃや」
―起きたくない。
無視するか。

「……。華音様。
苺をお持ちしました」
ガバァッ。

起き上がる。覗き込んでいた2人が思わずのけ反るくらい早く起き上がった。

「おはようございます、華音様」

ニッコリと笑って、キラキラ輝いている(ようにみえる)苺が入った皿を差し出す、金色の長髪美形。

「おはよ〜☆華音ッ」
「おはよさん。ようけ寝たのぉ」
腰に抱き着いてくる、可愛らしい風貌の少年と、ヒラヒラ手を振るオレンジ髪。

「…おはよう。眠い―」
「苺をお食べください、華音様。眠気覚ましになりましょう」
「ん」
長髪美形の麗志が差し出してくれた苺を、口に入れる。

「華音、おいし〜?」
なぜか膝の上に座っている可愛らしく整った顔の椎名。

「ん、美味しい。…ハイ」
「おょ?―んむ」

ひょいと、つまんでいた苺を、椎名の口にほうり込む。

「なんか可愛らしい構図やな」
「…?玖苑も食べるか?」

太陽みたいなオレンジの髪がよく似合う、精悍な顔立ちのイケメンである玖苑に、苺を差し出す。

「―もらうわ。ありがと」
「ん。あーん」
「え、え?あーん??」

よく分からないが、何やら慌てだす玖苑。

華音は、疑問を表情に浮かべながらも、そんな玖苑の口元に苺を持っていく。

「―玖苑クン。
早く口を開けなさい。
華音様のご好意ですよ」
「ぅ、あ」

おずおずと開いた口に、椎名と同じように、真っ赤に熟れた苺をほうり込む。

「うぉ。あまいわ〜」
「……うまいよ」
「苺大好きやもんな、華音」

苺大好きだけど。甘いものはなんでも好きだぞ。俺は。

「華音様、お眠りの
邪魔をしてしまい、
申し訳ございません」
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