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*冬と春の間に*
〜後藤編〜


「春ですね」

「そうか?」

「そうですよ。だって春の匂いがします」


そう言って深呼吸をする**。
俺には"春の匂い"がどういったものかはわからない。
だが、目の前で瞳を閉じて微笑む**を見ているだけで何故か自分も"春"という季節を感じられる気がした。
そして俺は**と同じように深呼吸をする。


「クシュン!」


すると聞こえてきたのは可愛いくしゃみ。
"すみません"と慌てながら謝る**に俺は無性に愛しさが沸き起こり、ふわりと自分のコートの中に包み込む。


「まだ春は早いみたいだな」

「ふふっ。そうみたいですね。風が少し冷たい…」

「だったらずっとこの中にいればいい」

「…誠二さん」


『ずっと』
それは俺の密かなる願い。
今はまだ伝えられずにいるが、いずれそれは現実になるだろう。
今はただ背中に回る腕の温もりに確信と期待を抱きつつ、温かな春の香りとともに**を優しく抱きしめた。




end.


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