想いの行方
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さくらのSPが昴に変更になり1カ月が過ぎようとしていた。
桂木はさくらとの接触も会話も徐々に減っていくことにどこか寂しさを感じていた。
この仕事をしている限りさくらとの関わりは切れることはないが、それがまた桂木の心を締め付けることとなっていた。
さくらと接触するのは仕事としてのこと。
桂木は自分の心をごまかしSPとしての顔を崩すことはなかった。
そのことによってさくらが寂しそうな顔をすることに罪悪感を感じた。
けれど一度決めたことは貫くという自分の意思は堅い、桂木はそう信じ込んでいたのだ。
「桂木君、ちょっとええか?」
「桃田部長、何かまたお困りですか?」
「そうや。えらい困っとんのやけど、聞いてくれるか?」
珍しく桃田部長がSPルームに来たかと思うと、桂木にある仕事の依頼をしてきた。
「え?私が長岡官房長官のSPにですか?しかし…」
「忙しいんは重々承知や。これは桂木君にしかできんことやさかい頼まれてくれへんか」
長岡宏。
平泉内閣の官房長官である。
総裁選で平泉と並び次期首相を争った人物でもあった。
結果は惜しくも落選となったわけだがその後は官房長官に任命され、平泉内閣を支えるのに欠くことのできない存在になっていた。
しかし、とある筋から黒い噂を入手した本部は確証を得るために桂木を捜査に加えたいと指名してきたのだった。
「いや…実はな、おかしな情報が入ってきたんや。総裁選に暴力団との関わりがあるんやないかってな」
「長岡官房長官に?そんな情報があるのでしたら私ではなく本部で捜査できないんですか?」
「捜査はしとる。今長岡氏がSPの1人が気に食わんゆうて変更を申し出てな、より優秀な者でないとならんとの条件付きや。そこで首相のSPである君を配属させる。そしたら間違いなく君を採用しようとするはずや。証拠を掴むまで議員の信用を掻っ攫って逮捕に協力してくれと本部からの指令や。平泉総理にも事情は説明してすでに了承は得とるから」
「そうですか。わかりました。現在の総理の警護態勢の変更と人員の確認をしてから捜査に加わる旨を本部にお伝え願えますか?」
「無理言うてすまんな。ほな伝えとくでよろしくな」
桂木はほっとした様子で去って行く桃田を見送り、2人のやりとりを聞いていたメンバー達が騒ぎだした。
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