短編

□現
1ページ/1ページ








「倉持聞いて聞いてー」

「おー」

「もし恋人ができたら、
初デートは
UFOキャッチャーしたいよね」

「………はぁ?」


倉持がぽかんと口を開け、
動きを一旦静止した。

間抜けな顔しやがって。

いかにもあたしを馬鹿にしたような目をしてる。
目潰ししてやりたいぐらいムカつく。


恋愛小説で読んでから
ずっと憧れだったんだよね、
彼氏とUFOキャッチャーすんの。


あたしが憧れを語ると
倉持が心配そうに
あたしを見つめた。


「お前頭ぶつけたのか?」

「失礼な。至って正常です」

「あっそ」

「うん、そう」

「…UFOキャッチャーやるより
買った方が絶対安ぃだろ」

「乙女心がわかってない」

「わかるわけねぇだろ」

「ちぇっ」


倉持は話に飽きたらしく、
あくびをしながら
ぐっと背を伸ばした。
あたしの話、
つまらなかったのかな。

あたしは
頬にできたばかりのニキビを
気にしながら、
両手で頬杖をついた。

なんか他に話題ないかなー…

話題を探してると
倉持が口を開いた。



「お前放課後、暇?」


「暇すぎる」


「俺、
UFOキャッチャーしてぇ気分」


だから、お前も
ゲーセン行かねぇか。


「倉持部活は?」

「一軍は休み」

「……御幸も誘う?」

「無理」

「あたしと倉持だけ?」

「…」

「カップルみたいに
思われちゃうよ?」

「…俺は
思われてもかまわねぇよ、
お前なら」


……………
これって告白なのか?

いや、まて。

これは作戦なのかもしれない。
あたしを騙して
馬鹿にしようという作戦だ!!


…と思ったが、
あまりにも彼が照れていたので
作戦ではなさそうだ。


「………あたしも」

「?」

「あたしも倉持とだったら
カップルって思われてもいい」


うっわ、恥ずかしい。
穴があったら隠れたい、
という言葉がふっと
頭の中をよぎった。


倉持はあたしの手を引っ張り、
早歩きで校門を出る。




「お前の好きな奴って
御幸じゃねーのかよ」

「御幸はただの友達」

「まじかよ」



だったら
もっと早く
告るべきだったな。


2人で少し後悔した。
まぁ、付き合えたんだからいっか。




「あたし、
くまのぬいぐるみがいいな」

「ヒャハ、了解」








[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ