学アリ夢小説「勇者のアリス」
□勇者よアリス学園入学を目指せ!
1ページ/4ページ
1話「落とされる勇者」
「結、お前が初谷結か?」
フードを被り、マントを身に纏ういかにも怪しい雰囲気の男がいた。
「むー。勇者に向かって“お前”とか、何様?」
その男に背を向けて立つ軽装の子供がいた。
「ふん。ということは当たりか」
「そうだね。私が勇者初谷結だよ」
子供、初谷結はくるりと回って男と向き合った。そしてポケットからおもむろに“爪”を取り出した。
「ほお。経験を積みすぎた勇者はそこまでできるようになったか」
「ふふんその通り。もう今では占いだって躍りだって天使だってできちゃうんだから」
「流石だな」
「で、用件は?」
結は“爪”を仕舞った。
「世界から、命令だ」
「へえ、世界からの使者か。ま、私みたいな勇者なんかそりゃ格下なわけだ。で?」
「お前は、一人で様々な勇者になりすぎた。だから、」
「だから?」
「この世界から消えてもらう」
二人のいる所だけ時間が止まったかのようだった。しかしその時は再び動き始める。
「あはははははははは。面白い。もう私
には勇者でいる資格がないんだね」
「そうだ。もう、本当の勇者の準備ができた」
「面白い面白い、傑作だ!へえ、そうか。所詮私なんて代理だったってことか」
「ああ。しかし、お前の世界が見つかった」
「ん?どういうこと?」
ちゃきりという音がした。結が、大剣を構えていた。
男は一歩後退りした。
「お前の、いるべき世界が見つかった。こことはかなり勝手が違うかもしれない。しかしお前はそこに戻らねばならない」
「新たな、世界か」
再び、ちゃきりという音がした。もう結は剣を構えてはいなかった。
「楽しいの?いや、楽しくしてみせるさ」
「来い」
結は、一歩前に出た。そして、音もなく彼女の姿はそこから消えた。
男は、ため息を吐いて足元を見た。
大きな穴が、空いていた。