novel

□第四話 海乙女−壱−
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人間たちの作ったおとぎ話での、人魚は泡になって消えてしまったらしい。私もそうなりたかった。どうして、私は生きていてあの人は居ないの?


―――――少し昔話をしよう。あるところに人魚が居りました。青に近い黒の綺麗な長い髪に、珊瑚の髪飾りを着けて青い鱗の生えた魚の下半身で、優雅に泳ぐ大変美しい、人魚が居りました。でも何故か人魚の漆黒の綺麗な瞳は、いつも悲しそうに揺らいでいました。


ゆらゆら…ワカメが海の流れにそってゆらゆら揺れます。それを眺める漆黒の瞳。


「私はどうして、他の子たちと違うのかしら」

溜め息をつきながら、呟く。そう、彼女は他の人魚たちとは違っていた。

「私は、どうして陸に上がると人間の足になれるのかしら。」

彼女は、陸に上がるといつでも人間の足になることが出来た。その事を気味悪そうに他の人魚たちは見てくる。

「お父さん、お母さん…」

親さえも彼女を突き放した。彼女がまだ産まれて間もない頃に、人間の足になれることが発覚し、すぐに彼女の両親は、彼女を捨てた。彼女が寝ているうちに知らない海に投げ出したのだ。

「どうして、どうして…」

私を独りにしたの?悲しい、辛い、助けて。彼女は今日も海の底で、泣くように悲しい歌を歌う。





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