novel
□第三話 雷と雨
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屋敷に白狐のドタドタという足音と怒声が響く。この原因は…
「龍ぅううう!!」
龍と呼ばれる妖怪だ。白狐はかれこれ30分程彼を探していた。廊下ですれ違う者達に彼の居場所を聞いても、皆姿は見たが、居場所は知らないと答える。
「アイツ…もしかして帰ったのか?いや、アイツが俺に何も言わず帰るわけないよな…」
白狐と龍は幼なじみであった。白狐は彼のことは、大体熟知していた。そんな考え事をしていると急にお腹が空いてきた白狐は龍探しを諦め、ご飯を食べに行くことにした。
「あ、鬼助。」
廊下を早足で歩いて行く白狐の前に何かを探すようにキョロキョロと周りを見ている鬼助が歩いて来た。
「大将!雨姉(あめねえ)知らない?」
鬼助の言っている雨姉とは、最近この屋敷に来た雨女の雨月(うづき)のことで、鬼助は彼女を姉のように慕っており、1日のほとんどを彼女と一緒に過ごしていた。
「いや、知らないけど鬼助、お前飯は?というかごめんな、一緒に飯食べるって言ったのに消えちまって。」
「いいよ、そんなこと!ご飯はまだ食べてないよー、あれー雨姉ほんと何処行っちゃったんだろ?」
白狐との話の途中でもキョロキョロと周りを見ている鬼助、その刹那――
「きゃああああ!!」
白狐と鬼助のいる廊下に近い部屋から女の悲鳴が上がる。
「今の声、雨姉!?」
「ああ!!雨月だ!行くぞ鬼助!」
「うん!」
白狐と鬼助は悲鳴が聞こえてきた部屋…雨月の部屋へと急ぐ。
スパーン!
気持ち良いくらい綺麗に障子が、白狐の手によって左右に大きく開かれる。
「どうしたんだ!?」
「雨姉!!何があったの!?」
転がるように雨月の部屋に入る白狐と鬼助。するとそこには…