波乗少女

□three surfing!
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日が高くなってきて、潮が引きだした―…。

私はさっきの男の事などとっくに忘れていて、ついでに昼食も忘れたまま
ひたすら波に乗っていた

『そろそろ移動しようかな…』

波が穏やかになりだして、少しつまらなくなってきた
確か向かいの島はこっちよりも少し早く満ち潮になる筈

速歩で家に帰っていると、さっきの浜ではしゃいでいた男たちと鉢合わせた

やだな…と思ったけれどあっちはこっちに気付いていない様だったから
黙って通り過ぎようと速度を速める

けれど、私の腕を一人の男が掴んで引きとめた

「君、美人じゃーん!俺たちと遊ばなーい?」

「お…本当だ、超ナイスバディだな」

『ちょっと、離してくれませんか…』

眉をぎゅっと上げてありったけの怒りの視線を向けた

「おいおい、そりゃないぜ、俺たち旅行に来てんだ、ちょっと遊ぶくらい良いじゃねえか」

あれやこれやと御託を並べては私を引き止めようとする男たち
相変わらず掴まれた腕は離してはくれない

黙って聞いてればべらべらと…ただの体目当てなのが丸わかりなんだよ―…。
イライラしてきた私は、ぐっと拳を握った

「おい、嫌がってんじゃねえか、離してやれよ」

薙ぎ払おうとした男の腕は別の男によって、私の腕から離れていた

ピンクの髪にゴーグル、褐色の肌にボードを持った男

それは朝見た男だった、引き潮になった海からあがってきたのだろう…。

「何だよ、地元の中坊かあ?俺たちはこの子に用があんだよっ、離せ!」

男は、掴まれていた腕を払った

私は呆然とピンク頭の男を見る…男は視線に気付いたのか
にかっと笑うと再び男たちに視線を戻した

何…この状況で笑ってるんだよ、相手は大人、しかも複数で
もし喧嘩にでもなったら勝てる訳ないのに…

「そうそう、中学生は家に帰って宿題でもしてな」

腕を掴まれた男の隣にいた男が馬鹿にしたように鼻で笑った
それに釣られるように他の男たちもははっ、と笑う

私はそれに苛立ちを感じたけれど、ピンク頭の男は相変わらず爽やかに笑っている

「じゃあ、こいつも連れてくぜ…中学生だからなあ」

と言うと私の手を握って自分のボードを持ちかえした

「なっ…中学生!?」

『そう…ですが?』

何を今さら…という気持ちで男たちの方を見ると、狐に咬まれたような顔をしていた。
何なんだ…大体あんたたちから話しかけておいてそんな質問していないではないか

だから大体分かっていて声をかけたのかと思っていたけど…

「……嘘だろ」

高校生か何かと勘違いでもしていたのだろう…男たちは焦った顔で互いの顔を見合っていた

「中学生なんかに手出したら、犯罪だぜ。おじさん」

ピンク頭の男は何故か嬉しそうにウィンクをすると、私の手を張って歩きだした


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