桃組プラス戦記
□それでも廻るアンダンテ
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雉乃木雪代16歳
整った顔立ち、清楚な立ち振舞いに丁寧な言葉遣い。これらの要素をなくしたとしても優しく、微笑む姿を見れば惚れてしまう人も多いだろう。
そして今日、雪代は靴箱に入っていた手紙の内容に従って指定された庭園に来ていた。
「き、雉乃木さん!」
「貴方がお手紙を下さった方ですか?」
「はい!お、俺、ずっと雉乃木さんが好きだったんですっ。よかったら付き合ってください!」
そう言って深く頭を下げて右手だけを雪代に差し出す男子生徒は耳まで真っ赤で勇気を出してくれたのだと分かる。
しかし受けとれない。
受け取るわけにはいかない。
「申し訳ありません…私は貴方の想いに応えることができないんです」
だから雪代もその人の失礼にならないよう誠意をもって深く頭を下げる。
頭を上げれば男子生徒は悲哀に満ちた顔だったが、笑顔で雪代を見ていた。
「わかってました、雉乃木さんが誰を好きかなんて。ごめんね、困らせて…」
そう言う男子生徒は雪代の後ろに視線を向けていた。
雪代もつられてその方向へ振り向いて目をやる。するとそこには何かを探すかのようにきょろきょろしながら歩いている祐喜の姿が。
「祐喜様……」
「…俺の用事はこれだけだから、行きなよ。」
愛しそうに祐喜の名を紡ぐ姿を見れば、もう諦めるしかない。
男子生徒は祐喜の方を指差して微笑んだ。
「ありがとうございました」
本当に優しい人だと思いながら、本当に思う相手のところに走っていく。
「祐喜様!」
「雪代!よかった、探してたんだよ。何処にいたんだ?」
「少し庭園の方にいってまいりましたの」
そう言った雪代の表情は穏やかで、どこか嬉しそうで.....
「私って分かりやすいのでしょうか?」
「うーん、わりと」
「……隠しているつもりなんですけどね、一応は」
「そうなのか、だったら―…」
祐喜はポケットからハンカチを取り出し雪代に差し出すと、
「まずは鼻血、出さないようにしなくちゃな」
「あーりゃー」
(想いは大きすぎて)
(隠すことができないの)
あとがき
きっと雪代はモッテモテだと思う。