企画小説

□越前
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十年に一度の逸材集いし群雄割拠の年――。



そう表現された中学テニス界の黄金期から二年。逸材たちは、高校テニス界に続々と集いつつある。

今年、二年前に中学二年生だった選手、――青学の桃城や海堂、立海の切原、氷帝の日吉などが高校に上がった事により、高校テニス界はいっそうの盛り上がりを見せた。
遠山率いる四天宝寺中の独走だった中学テニス界と違い、高総体は接戦の接戦…。月刊プロテニスでは、黄金期の再来とまで称した。

しかし高校テニス界に、二年前の二、三年選手が全て揃ったわけではない。

中三の秋に手塚がドイツへ留学。合宿場での「すぐに追いつく」という言葉を守るかのように、跡部も卒業と同時にイギリスへ帰国し、東京都は実質ツートップを失った。それでも青学と氷帝は、トップの穴を感じさせない強さで毎年全国の常連を果たしている。
一方神奈川の王者立海は、相変わらずの最強伝説を突き進んでいる。もともと一年レギュラーのいなかった立海では、すでに今年でベストメンバーが揃い、まさに二年前の再来。死角なしと言われている。二年前と同じメンツがすでに揃っているところは、他に不動峰と比嘉、聖ルドルフなどもなる。
そして関西では、四天宝寺のレギュラーが示し会わせたかのように同じ高校を受験。西の雄の名は、新たに彼らの進学した高校へ与えられる事となった。



徐々に整いつつある、二年前の暑い夏。しかし、決して同じメンバーが集まる事はない夏…。

そして今回、二年前の黄金期を再び彷彿とさせるような出来事が始まろうとしていた。それは……。



U−17日本代表――。



まだ中学生の遠山や蔵兎座も招集されている今回の代表合宿。二年前の代表合宿から始まり、今年で三度目の、高校生以下の選手も実力があれば幅広く採用する試み…。
招集には、二年前の合宿参加者のほとんどが集まった。しかしその中に、越前リョーマはいない。

越前、手塚、跡部。そしてそれぞれの事情により高校でテニスを続けなかったメンバーなど数人のいない合宿で、彼らは毎年お馴染みとなった過酷すぎるメニューをこなしながら、代表の座を目指す。
しかし日本の合宿しか経験のない彼らには知るよしもないが、このような合宿は、国際大会に参加する多くの国で、同じように行われてた。

勿論それは、手塚も跡部も、そして越前も例外ではない。

そしてその、もやは試練ともいえる数々のトレーニングをやり抜き、自身をレベルアップし、コーチ陣に認められた者だけが、代表の座を掴めるのである…――。









「それではこれより、今大会における代表選手を発表する。……ケビン・スミス」

「当然」



口角をあげる金髪の少年。



「ビリー・キャシー」

「ヒュー、ヤリィ!」



ガッツポーズを作るテンガロンハットを被った少年。



「トム・グリフィー」

「はい」

「テリー・グリフィー」

「はい」



「当然ね、兄さん」、「あぁ、全くだ」と会話する双子の兄弟。



「マイケル・リー」

「…………」



静かに目を閉じる寡黙な少年。

次々と呼ばれる名を、三人のアジア系の少年は、三者三様の面持ちで聞いている。
不安そうにしている少年。全く興味がなさそうに欠伸をしている少年。そして、黙ってコーチの顔を見ている少年……。



「…ケン……」

「はい!」



ケンと呼ばれた少年は、苗字が呼ばれるより早く、間髪いれずに少々大きな声で慌てて返事をした。顔には驚きと喜びが溢れている。
後ろを振り返るケンに、帽子を被った少年は二ヤっと笑みを向けてやる。



「…リョーガ・エチゼン」

「はいよ」



ヒラッと右手を持ち上げながら、軽く答える少年。



「最後…、リョーマ・エチゼン」

「…ふっ……。はーい」



己の名に、少年は当然、とでも言いたげに満足気な笑みを浮かべると、すぐに不敵な顔で返事をした。



「以上、十名を、U−17アメリカ代表選手とする」

「はい!」












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