Short

□同音異義語って面倒だけど味がある
1ページ/2ページ


(阿伏兎視点)


『こんにちは、阿伏兎さん。今日は何をお求めで?』


爽やかな笑顔が俺を出迎えた。


「…これから地球に向かう。江戸への侵入経路を教えてくれ」


『地球…ですか』


女は一瞬眉を寄せたが、すぐ様デスクにあるコンピューターに目を移し、調べ始めた。


丹波美咲は宇宙を股に掛ける腕利きの情報屋。


特に、故郷である太陽系付近に詳しい。


俺は、何か情報を探る時は、必ず美咲の所へ行く。


「…地球はお前さんの星だったか」


『…そう、ですね。江戸生まれではないですが、日本で生まれ育ちました』


美咲の声は、少し悲しげに聞こえた。


幾つもの犯罪に手を貸す美咲でも、祖国には何かしら思い入れがあるようだ。


まぁ、当たり前だろうが…


「頼むから、そういう顔しねェでくれねーかなぁ。別に、地球潰しに行くわけじゃねェんだから」


『えっ、あ、すいません!私事でした…』


美咲は苦笑しながら頭を下げた。


『はい、出来ました。これが侵入ルートです』


美咲は数枚の紙を差し出した。


それを受け取り、内容を見る。


細かい所まで分かりやすく示されている。


美咲らしい内容だ。


『操縦プログラム用にデータカードもお渡ししておきますね。』


「気が利くねェ。助かる」


『阿伏兎さんにだけサービスです』


「へっ、嬉しい限りだ」


データカードを受け取り、金を出す。


「んじゃ、行ってくるわ」


『はい、行ってらっしゃいませ』


俺は上着を翻しながら歩き出した。


…あ、そうだ。


1つやり忘れたことが。


俺は立ち止まって美咲の方に振り向いた。


「美咲」


『はい』


「愛してる」


『私もです』


俺達の合言葉。


これを言うと、大抵の仕事は成功する。


美咲は優しく微笑んでいた。


“ご無事で”と言うように。


俺はそれを見て喉で笑うと、また歩き始めた。


さぁ、仕事だ。


さっさと終わらせよう。


終わらせて、また美咲に会いに来よう。


.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ