銀色の心と共に

□No.9
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カコンと庭先の鹿威しが鳴った。


神楽はそれを眺め、私と銀さん、新八は立派な和室でお茶を啜った。


「我が家は幕府開府以来徳川家に仕えてきた由緒正しき家柄。こんな奇妙な動物をペットとして飼っているなどと世間に知れたら、一族の恥だ」


「いや、そんなことないと思うんですけど」


「なんとか内密のうちに捕まえ、始末してほしい」


「いや、流石にそれは可哀想でしょ!」


呆けた老人相手だと話が続かず、依頼内容を確認する為に以前の仕事でも来たことのある屋敷に赴いた私達。


現当主に話を聞けば、あのミックスペットは、前当主のあの老人が何処かで拾ってきたらしく、みんな気味悪がっているのにあの老人だけ可愛がっていたらしい。


元いた場所に戻せと言っても断固拒否。


いっそのこと、自分達で捨ててこようか…と思った矢先に失踪したとのこと。


「亡骸を見せれば、流石の父も諦めるだろう。どうか、よろしく頼む」


気不味い顔で新八と見合っていると、銀さんが黙って立ち上がった。


『銀さん……?』


「悪ィが、俺達は殺し屋じゃねェんだ。動物だろうと殺しの依頼は受けねェよ。俺達は、あのじいさんの依頼を受ける。あとはアンタらで好きにしてくれ。行くぞ、オメーら」


軽蔑したような目で当主を一目見ると、その場を去ろうとする銀さん。


『ま、待って…っ』


私達は慌てて銀さんのあとを追った。





「じゃあ、とりあえず、手分けして探しましょうか」


屋敷から出た私達一行は、道端で作戦会議を開いた。


「だな、最初は無難にそれからだろ」


「じゃあ、私は定春と一緒に四番町から六番町の方を探すアル」


「じゃあ、僕は紀尾井町の方を……」


それぞれ違う場所を指定しようとするみんな。


『あ、あの』


「ん?どした?」


私は言った。


『みんなでバラバラになって探すより、二手に分かれて探した方が良いんじゃない?』


「何でアルか?」


『え、だって、1人で探してたら何処か絶対見落としがあると思うから。2人で確認し合いながら探した方が確実だと思うんだけど…』


言いたいことを言い、そっとみんなの様子を見る。


みんな奇妙そうな顔で私を見ていた。


アレ?私変なこと言ったかな?


「ま、まぁ、あながち間違っちゃいねェが…」


「でも美咲さんがそう言うんだから、そうやってみますか」


「私は何でも良いアルヨ」


あ、良かった。


みんな賛成してくれた。


『じゃ、じゃあ、誰と行動しようか』


気を取り直して、会議を続ける。


「私、美咲とが良いアル!ついでにかぶき町の穴場を案内したいネ!」


神楽が私に抱きついてきた。


うわっ、可愛い…!


けど、すぐに銀さんが神楽を引き剥がす。


「ふざけんな、クソガキ。遊ぶんじゃねェんだぞ、コラ。それに、江戸に慣れてない美咲とお前が一緒じゃ俺達の仕事が増えるだろ!」


「どういう意味アルか、それ!」


銀さんと神楽のにらめっこが始まった。


「ちょっと二人とも!くだらないことで喧嘩しないでくださいよ!」


新八が止めに入る。


しかしすぐに、何か思い付いたように新八が私の方に振り向いた。


そして、一言。


「…というか、美咲さんって江戸は初めてなんですか?」


一瞬、沈黙が流れた。


ま、まずい!!


私の正体、一切知られたくないのに…!


ぎ、銀さん!アンタ、何てこと口滑らしてんの!


でも、生まれとか住みとかまだ教えてなかったはず……


私は苦笑いしながら、


『え、えっと、江戸の郊外の方の生まれなんだ。都会は初めてで…』


どうにかこうにか答えた。


「あっ、ごめん、嫌なこと聞いたかな…?」


『いやっ、全然大丈夫だよ!』


私は手を振って答えた後、銀さんを睨んだ。


銀さんはばつの悪そうな顔をした。


「と、とりあえず、美咲は俺と行く。お前らはテキトーにここの区内を探してくれ」


「ちぇっ、分かったアル。行くぞ、ダメガネ」


「え、ちょっ、待ってよ神楽ちゃん!」


神楽は定春に乗り、新八を引き連れて行った。


その場に残った、私と銀さん。


私はもう一度銀さんを睨んだ。


「わ、悪かったって。なるべくお前の情報は喋らないようにするから」


『別に構わないと言えば構わないんですけど、私が答えないといけないような時に困るんで、お願いします』


「分かった、気を付ける。…じゃあ、行くか。俺達は区外探すぞ」


『了解です』


私もその場をあとにして、ペット探しを始めた。

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