-詩&短文‐

□お蔵入り
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〜“影”から相反者へ〜


長い永い黄昏(ヤミ)の中で
ようやく巡り合った
“千”の名を冠す男を殺せる
それだけの器を持つ貴女


幾千の時を超え
幾万の人を巡り
ようやく貴女と私は出逢った
けれど貴女は酷く傷ついていて


助けを呼ぶ声もいつしか掠れて
誰かに縋る手もいつしか地に落ち
感情も擦り切れ
ココロすらも壊れかけていた


「ねぇ、私を受け入れてくれる?」
「…勝手にしろ。殺したければ殺せ」
「殺しはしないわ。代わりに…」
「お前…変わってるな」


私はなんて狡いんだろう
貴女はもう何も拒絶できないほど
身体も心も崩れていたのに
それでも精一杯の感情を向けてくれたのね


全ての愛から見放された貴女は
十字架を模った結晶に魅入られ
闇を統べる私を受け入れて
ようやく“ココロ”を取り戻した


本来ならば相反する私と結晶
変わり者の私と結晶
争いを好み
戦争の火中に身を投じたい
それが私と結晶の望みだから


それを同時に叶えてくれたのが貴女
だから私と結晶は貴女に捧げるの
限りなく近い私達だから
誰よりも貴女に必要なモノは分かっているつもり


生きる為の知識を
相手を倒す為の力を
生き残る為の知恵も…そして


どこかが欠けてしまった愛すらも
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