novel

□最強と呼ばれて
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―あれは俺が池袋を拠点として間もなくのことだった…

『池袋にはぜっっっっっってぇー来んな!』

という俺のことばを余所に彼奴は池袋にノコノコと時たま現れていた。

来んだけでも虫酸が走るってぇーのに、わざと彼奴は俺の前に現れやがる。

ある時は西口公園で、またある時は露西亜寿司で…
だから自販機投げつけた後に訊いてやったんだ。

『何で手前は俺の前にわざと現れてやがる!!』

彼奴はいつものように嘲笑い(あざわらい)ながら言った。

『ふ、ふふふっ。』

『ふっ、はは、あはははは!!』

『何笑ってやがんだよ!』
『え〜、だって俺、シズちゃんの前にわざわざ来てる訳じゃないんだけど?』

『惚けんじゃねェ!』

『…惚けてなんかないよ。こんなに毎日人の行き交う此処、池袋の街でシズちゃんをわざわざ見つけ出すなんて、そんな馬鹿みたいな能力俺には無いよ〜マサイ族じゃあるまいし♪』

『じゃあ何でこんなに手前と出会す(でくわす)んだよ!!だいたい此処には来んなって言ってあんだろうが!!!』

『そうそう!俺も不思議だったんだよね…』

『うーん…』

彼奴は少し深く溜め息をついた。

その溜め息の意味は、未だ、俺にはわからない。

ただ、わかるのは、俺が見た最初で最後の彼奴の虚ろな表情(かお)ってことだ。
一変して、不敵ないつもの笑みでこう言った。
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