小説

□相合傘
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――ポツ ポツ ―――……





「あ、雨降ってきちゃったね」



暗い雨雲が漂ってきて、今か今かと冷たい雫が落ちてきそうな天気の中、犬夜叉一行は変わらず四魂のかけらを探す旅をしていた。

だが、道中心配そうに空を眺めていた一行の予感は見事的中し、ひとまず雨宿りができそうな場所を探し歩いた。




「いけない…ッ早く雨宿りできる場所を探さなくては!!」



「んだよ弥勒、てめェ濡れるのが嫌なのか?」



雨が目に掛からぬよう袖で額を隠している弥勒に対し、犬夜叉は平然と腕組をしながらスタスタと先を歩いている。



「そういう意味ではない。まだ小雨程度だが、このまま雨に打たれ続けるとおなごたちが風邪を引いてしまうからだ!!」



…と、弥勒はそう言ってさりげなく隣に歩く珊瑚の肩を抱いて力強く言う。



「あーハイハイ、ありがとね法師さま。」



今のような彼の行動は、珊瑚にとっては既に日常茶飯事。いつもの事であるからして、慣れてしまっているのだ。

そしてこういった光景を見慣れてしまっている犬夜叉自身も、はぁ…と小さな溜め息をついてから気をきかせるため二人から距離を置く。


ふと、自分より少し後ろで"鉄の車"を押し歩くかごめに目がいった。

籠の中に乗せてある"りゅっく"とやらに七宝が入り込んで、二人でなにやら話をしている。



「………。」



たしかに、あんなに足を露出していれば風邪を引いてもおかしくない。

この時期は気候が変わるため、体調を崩すことがありがちなのだ。

心配になった犬夜叉は、ぴたっと進む足を止めてかごめたちが追いつくのを待ってみる。
だが不自然に立ち止まった自分に彼女は見向きもしないため、咄嗟に呼び掛けようと彼女の肩に手を伸ばした。

―…が




「かごっ…

「ほぉ〜これが傘なのか?」



「そーよ、こうやって開いて雨を凌ぐために使うの。まぁこれは折りたたみなんだけどね…」



二人の会話に、犬夜叉の呼び声はかき消されてしまう。



「七宝ちゃん、じゃあコレをお願いね?」



「分かったぞ!!」



そう言って、何故かかごめはそれを自分で渡しに行かず七宝に頼んで弥勒たちに渡しに行かせた。



「自分で渡しに行けばいいだろ?」



普通に考えておかしい…と思った犬夜叉は、きっと自分の存在に気づいているであろう彼女に声を掛けてみる。



「犬夜叉、いつの間に横に居たの?」



「………。」
(相変わらず可愛くない女だな…)



その一言でショックを受けた犬夜叉は、少し拗ねた顔で黙ってかごめを見つめてみる。かごめはそれを見てクスッと笑う。



「バカねぇ…冗談よ。別に…ちょっと珊瑚ちゃんと計画立ててるだけ。」



「計画ぅ?」



かごめの意味深発言に、ますます犬夜叉は疑問を持ってしまった。





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