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□隣同士(3/13)
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私と亜弥は幼なじみ。
物心ついた時からずっと隣にいた。

お家が隣同士というのもあって、亜弥が執筆に集中したい時以外は昼夜問わず、特に用はなくても私の部屋に来ることが多い。



今日もそう。
私としても亜弥といられることは嬉しいんだけど…






「あ゙〜スランプだー…書けない〜」

「ちょっと、人の家まで暗い空気持ち込むのやめてよね」

今は苦笑いしか出ない。



悪い事する時はこっちがハラハラするくらい肝が据わってるのに、専門分野に限っては弱気なんだから。

そんな所、可愛いなって思うんだけどね。



私はあんまり文学に詳しくないけれど、亜弥の才能と努力は知ってるよ。
だから迷わずどんどん書いちゃえばいいのにって思う。

以前そう言ったら、小説はそんな単純なものじゃないって怒られちゃったっけ。




だからって人の家に来てまで腐らないでほしい…。


見てられなくなっちゃうじゃない。






――カチャ、シュボ

「ぷはぁ〜vV」




ん?


「あー!タバコはダメだって!!ゆきのんに叱られたでしょ!!それにぬいぐるみに臭いついちゃう〜!!」

私が泣きそうになりながら目をグルグルさせて訴えたら、はいはい、なんて言ってやっと消してくれた。


「せっかく気分転換しようと思ったのに」

「だ、だからってタバコは…」

「分かった、分かった」

シャーペンをくわえながらふてくされる亜弥。




「もぅ。…ねぇ、亜弥」

「ん?」

「こっち来て?」

「?、ほいほい」



ギュ…



亜弥の頭を抱え、優しくなでる。

「大丈夫だよ。焦らなくてもいい、亜弥ならちゃんと書けるから。」

「ちょっ、いきなり何っ?」

「…こんな時くらい、甘えていいんだよ?」


ジタバタしてた亜弥が大人しくなって、溜め息をひとつ。

「はぁ、今までも十分甘えてるって。…ったく、りかには適わないや」


そうやって照れた声で呟くから亜弥には悪いけど、可愛いなぁ、なんてまた思ってしまった。


しばらく頭をなでていると…




むにゅ



「きゃっ!!あああ亜弥っ!!」

「むっふふ〜、また大きくなりやがったな?」

「や、やめてよ〜」

「こんな不健全な胸はこうしてやるっw」



そんな風にしばらくじゃれていると、亜弥が急に叫んで立ち上がった。

「あっ!!!そうか、あそこをこうしてこうした方が面白いかも!!」



良い気分転換になったのか、何かアイディアが浮かんだみたい。


「ありがとう、りか!!忘れないうちに書かなきゃっ!!」


そしてバタバタと窓から自分の部屋へ帰っていった。


「あ、危ないから窓から帰っちゃダメー!!」


叫んだ言葉はきっと亜弥の耳には入っていないんだろう。




残された私は、自分の部屋にひとりきり。

それでも寂しさなんてなくて、私の心は幸せで満たされていた。



ふふっ、

「私だって、亜弥には適わないよ?」











(どちらが上、とかじゃなくて、いつだって隣同士)
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