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□unproductive(3/11)
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唇に何か温かいものを感じて目が覚めた。

暗闇の中、人の姿。

一瞬敵かと思ったが、見慣れたこのシルエットは…


「ヴァ、ニラ?」


私の問いかけにその人影はピクリと動いた。
正解だったようだ。





「ごめんね、ライト」


なんで謝るんだ?


「最初で最後だから。…ごめんね」


なんの事だ?

そう問いかけようとした時、また唇に感触がした。

長く優しいキスだった。







顔を離しこちらを見ているヴァニラ。



…泣いているのか?


グラン=パルスの明るい月と星の光が逆光となりヴァニラの表情は暗く見えない。



でも、なぜだろう。

そんな気がする。



「泣くな、ヴァニラ」

「っ、泣いて、ないよ?」


嘘、だろう。





「ライト、」

ヴァニラが再び口付けてくる。
今度は熱く激しいキスだった。


ヴァニラの手は私の衣服の中へと進み、素肌を伝って上ってくる。

ヴァニラが何を求めているのか、分かる。






想像も出来ないほどのものを背負っているヴァニラ。

何よりも人を傷付けることを恐れているヴァニラ。

そのヴァニラがこんな行動に出るなんて、きっと耐えきれない程の何かがあるのだろう。

だから私はヴァニラを受け入れようと思った。






いや、そんなのはただの言い訳にすぎないのだろう。

私がヴァニラを拒まない理由は、私が一番良く知っている。




ヴァニラを愛している。




無意識のうちに心の奥深くに沈めていたこの感情に気付いたんだ。

本当はずっと前から知っていたはずなのに、こんな状況になって初めて自覚するなんて鈍感もいいところだな。



そんな事を考え、自嘲しているうちにヴァニラの手は私の胸まで到達していた。











激しくなる行為の最中、ヴァニラは何度となく私の名を呼んだ。
そして私も何度となくヴァニラの名を呼んだ。



それ以外に言葉は交わさなかった。
私もヴァニラも、この気持ちを言ってしまえば何か崩れるのではないかと感じていたのだろう。






高ぶる感覚の中、ヴァニラが独りどこか遠くへ行ってしまいそうで必死でヴァニラを抱き寄せた。

私はそのまま絶頂を迎え、直後に襲われた倦怠感と眠気に負けて意識を手放した。

遠のく意識の中で、抱きしめているヴァニラの体温と頬を撫でられる感覚が妙に心地よかったのを覚えている。







朝、目覚めるとヴァニラの姿はなかった。



あんなに強く抱きしめていたのに…。

あんなに熱かったヴァニラの体温も頬を撫でてくれていた手の感触も今では感じられず、ただ冷えたタオルケットだけがかけられていた。


あの出来事は夢だったんじゃないのかと思える程、ヴァニラの痕跡は綺麗になくなっていた。



そう、夢だったのかもしれない。

心の奥底で眠っていて、自分でも気付かなかったあの気持ちが私に見せた夢。


そう考えると少しホッとして少し、寂しかった。



顔でも洗えば、この小さな寂しさも忘れられるだろうか。




寝場所から離れて水場へ向かうと、そこには既にみんな揃っており、珍しくおせぇな、なんて声をかけてきた。

彼らにおはようと返すと、顔を洗っていたヴァニラが振り向く。


「おはよう、ライト」


いつものヴァニラの笑顔だ。
みんなも特に気にする様子はない。






だが、その笑顔にどこか無理しているような違和感を感じるのは私の気のせい、だろうか。













(そう信じたいが、そう信じたくない)
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