SS

□サスケは役得(2/25)
1ページ/2ページ

今日は、シノブちゃんから屋敷に遊びに来ないかって誘われていた日。

約束の時間より少し早いけどいいよね。



歩き慣れた屋敷の中、いつもの部屋にいなかったシノブちゃんをさがす。

「シノブちゃーん。」




その時、奥の方の部屋からシノブちゃんの声が聞こえたような気がして耳を澄ます。

あれは…サスケの部屋。

何を話しているのか気になって、ついつい気配を消して近づいてみた。






「やっぱり恥ずかしいですね。…でもシノブ、頑張りますっ!! いきますよっサスケさん!!」

「おう!!いつでも来い、だよ!!シノブちゃん!!」


何やってんの、このふたり?






「シ、シノブは貴方のことが大好きですっ!!!!」


…っ!!

えっ?今のって…。



想像もしていなかった言葉に動揺して、カバンを落としてしまった。



「っ!!誰ですか!?」

その音に気付いて勢いよく襖を開けたシノブちゃんと目が合う。


「え?か、楓さん…?」



なんでか分からないけど、気付いたら私はシノブちゃんに背を向けて走っていた。




「か、楓さーん!!待ってくださいっ!!」


シノブちゃんが追ってくる気配がする。

なんでよ。
サスケの側にいたらいいじゃない。


「楓さんっ、聞いてください!!さっきのは…っ!!」


なんで、
なんで追ってくるのよ…!!

シノブちゃんの顔を見たくなくて、今の自分の顔を見られたくなくて、必死に走った。


シノブちゃんはいつまでもついてくる。





「待って、楓さ…きゃっ」

後ろからシノブちゃんの悲鳴が聞こえた。

「えっ?」

思わず足を止めて振り返る。


「あいててて…。あはは、盛大に転んじゃいました。」


そこには膝から痛々しく血を流しているシノブちゃんがいた。

心配かけまいとしているのか、顔は笑っているが、目許には涙が滲んでいる。


「シノブちゃん!!」


ポケットからハンカチを取り出しながら、急いでシノブちゃんの所まで戻る。

「大丈夫!?どこかで傷口洗わなきゃ。」

ハンカチをシノブちゃんの膝にあてながら、どこかに水道がないか探す。



「…楓さん。」


その時、シノブちゃんが私の服の裾をキュッと掴んだ。

「?」

「あ、あのっ!!えっと…。」


何が言いたいんだろう。
…もしかしてサスケと付き合った、とか?



そんなの聞きたくない。

でも、…この状況じゃ逃げられそうにないな。


それならせめて、シノブちゃんが言い出しやすい雰囲気にしてあげよう。
シノブちゃんに気は使わせたくない。



「なに? 大丈夫だよ。ちゃんと聞くから。」

そう言って頭をなでてあげる。
笑顔のつもりだが、ちゃんと笑えているだろうか。




シノブちゃんは少し照れくさそうに笑って、

「えへへ。…楓さん、大好きです!!」

笑顔でそう言った。




好き…?




「はい!シノブは楓さんのことが大好きです!!」

さっきの呟きは声に出ていたらしい。
混乱する私の頭に追い討ちをかけるように、シノブちゃんは元気良く答えた。



好き…。

その言葉を頭の中で反芻する。



そっか、あんなにショックを受けたのは…。





あれ?

「でも、サスケは?」

さっき屋敷で聞いた告白はなんだったんだろう。



「あ、あの…。それは、れ、練習してたんです。」

シノブちゃんは恥ずかしそうに小さな声で言った。



…れ、練習ぅ〜!?

それってシノブちゃんが私にする告白の練習をサスケとしていて、それを私が偶然聞いちゃって勘違いしたってこと?




「…ふふっ、あはは。なぁんだ。」

なんだ。
そんなことだったのか。



私の勝手な勘違いのせいでシノブちゃんに怪我までさせて…。



それでも、追いかけてきてくれて、大好きだって言ってくれて、嬉しかった。

私の勘違いだって分かって心からホッとした。





好きなんだ。

私、シノブちゃんのことが好きなんだ。



気持ちを自覚した瞬間、目の前のシノブちゃんがどうしようもないくらい愛おしくなって、ごめんねの意味も込めて優しく抱きしめた。


「私も…、大好き。」






END.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ