selfish

□虚偽の肖像
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「・・・何故そうまでして世界を手中に治めたいのです」

情けない己への苛立ちをぶつけるように「馬鹿馬鹿しい」と言葉を投げれば、白蘭はクスリと笑った。

まるで行き場のない癇癪を晒す子供。

それを見るような目で見つめられ、骸は居たたまれない気持ちにすらさせられて。
それでも骸の口から言葉は止まらなかった。

「こんな世界を手に入れて何になるというのです」

馬鹿で傲慢で欲に満ちた人間の世界など。
六道の中でも人間道が最も醜い。
取るに足らないものではないか、と。


「骸くん、今日はよくしゃべるね」

昨日優しくしすぎたかな、と起き上がることもせずに掠れた声で白蘭が呟けば骸は、昨夜の情事を思い出し、ビクリと身体を震わせた。

自分でも驚く程に乱れた己の姿。
思い出しただけで羞恥に顔が染まる。

そんな骸を尻目に、白蘭は淡々とした調子で話を戻した。

「僕は世界が欲しいわけじゃないよ」
「・・・では何だと言うんです」
「全部壊れればいいと思うんだ」

馬鹿で傲慢で欲に満ちた人間など滅びればいい。
そうは思わないかい、と問われれば骸は眉根をあからさまに歪めた。


世界中の要人を乗っ取り操って、この醜い世界を純粋で美しい闇で塗り潰す。
手始めにマフィアの纖滅を願い、全部消してしまおうとしていた自分自身と重なって。
憎しみばかりが己を支配していたあの頃。
マフィアへの復讐心と敵愾心だけが生きる希望だった。



この男もそうだというのか。

そう思うと、骸は少しだけ白蘭を憐れだと思った。

しかし、憐れだと思うと同時に生まれるのは苛立ちで。

「全部壊して、僕の選んだごく僅かの人間だけが僕の名の元、生きることを許される」
「・・・茶番ですね」
「骸くんにはわからないよ」
「えぇ、わかりません」

わかりたくもありません、とそっぽを向いたまま骸は乱暴に言葉を返した。

苛々する。

「まるで子供の駄々だ」

自分の望むものだけを欲するなど。

「阿呆らしくて反吐が出ますね」

うつ伏せに倒れたまま、だが白蘭はピクリと身体を動かした。
しかしそれにも気付かず、男から背を向けていた骸は罵声を連ね、己の苛立ちを緩和させるように饒舌に言葉を並べたてる。吐き出すように繰り出される言葉は、まるで切れの良い刃物のようで。


「ねぇ、黙ってくれない骸くん。煩いよ。」

気力がないからと黙っていた白蘭も、いい加減不愉快に拍車が掛かってきたのか、心なしか声のトーンが落ちる。
それでも骸の言葉は止まらなかった。








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