ハートの国のアリス

□オリジナル
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大事そうにそれを抱え、ペコリとお辞儀をしてから店を出て行った。


はぁ……………………

肺の一番奥からのため息、余所者なんて言うからどんなのかと思ったが、普通だった…。
むしろ可愛く、礼儀正しい…。

この世界には似合わない感じの女性だ。

正直拍子抜け。


「ねぇ、今の余所者よね!?どうだった?どうだった?」


今まで店の奥にいて、出てきそうも無かった他の従業員が、いきなり俺の周りに輪を作った

さっきまで「我関せず」だったのに、調子のいいやつらだ…


「別に普通だった…」
「普通なのか!?」
「でもあんな噂が立つぐらいだよ?」
「絶対普通じゃないでしょ!?」


次々と代わり代わりしゃべり出す…。
ウザい…。


「しらねーよ、次来たら接客すればいいだろ。そうしたら分かるよ。」


正直、最初程余所者がめんどくさいとは思わなくなっていた、自分が想像していたような人ではなく、好感を持ってしまったから

でも…。
噂が本当だったら、知り合いにでもなってしまったら……


「俺らは顔無しなんだから誰が出たって分からないしな〜。」
「また貴方が出たって平気よ!」


あまりにも無責任な一言だ…
それなのに、興味心身で…


「だから、お前があの余所者専属って事で決定だ!」
「はぁっ!?」


お〜
と、歓声が湧く。


「よし、そういうことだ、さぁ仕事、仕事。」


蜘蛛の子が散るかの様に、各自仕事場に戻って行った

……………まぁ、先の事を心配したってしょうがない…。
次いつ来るか何て分からない、むしろ、もう来ないかもしれない。
コーヒー屋なんて他にもある…
そう自分に言い聞かすしかなかった。



数日後…

カランカラン
客がきた事を知らせるベルが鳴る。


「いらっしゃいませ。」


ドアの前に立っていたのはあの余所者だ…
カウンター…つまり俺の所に直接向かって来る。
って言ってもこの余所者に顔無しの俺たちの見分けなんて、着かない事は重々承知だ。


「先日もこちらでオリジンブレンドを購入させて頂いたんですが…」
「そうですか、ありがとうございます。」


やぱっり余所者…
結局は顔無しの顔など見分けがつくはずもない

前回と同じ様なやりとりをして
以前のとは違うが、店のオリジナルを買って帰った。
やっぱり最後にペコリと挨拶をしてから。





「また来たわね!」
「別に今日も何も無かったからな。」
「なんだよ!何かあってもいいだろう!」


何かあっては俺が困る!

俺を輪の外にしながらみんなは楽しげに話している。
ため息しか出ない…。
その日も余所者はやってきた。

「いらっしゃいませ。」
「こんにちわ。」

何度目だろうか。5回目…?6回目…か?
言える事はそのすべてに俺が接客をしてると言う事だ。
何時もと変わらず、前回のコーヒーがどうだったかを聞き、次のコーヒーの提案を出す。意見を言われる時もあるが、今日はすんなり決まった。
コーヒー豆を袋に詰めてうる時。

「今更失礼かもしれないんですけど…」
「はい?」

いつもの様に少な目にコーヒー豆を積めている時。

「もしかしていつも接客してくださってますか?」



…………!



俺たち、顔無しの見分けが着く訳無い…。
余所者なんかに…。

その時、店のドアのベルが勢いよく鳴った。

「アリス!」

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