オリジナル

□花束をあなたに
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「ごめんなエコ吉…」

いつものTシャツを綺麗にたたみ亜智はタンスにエコ吉をしまった。
今日は大事な日だ…。
大事な日こそいつも一緒のエコ吉とを着ていたいが、今日は本当に大事な日…。心の中でも謝る。

リクルートスーツを着込んで長めの髪も後ろに一本で結んだ。

もちろんこんなスーツを亜智が持っていた訳が無い。
今日の為に買ったのだ。リクルートスーツの理由は安いから。

鏡を見る。

いつもの姿とは違う自分の姿。
少しこそばゆい…。この姿をみてひとみはなんて言ってくれるだろうか。

もし、もしも、嫌がられたら…。
そう思うと恐いが、ひとみならそんな事は無い!
自分に言い聞かせる。

「いってきます!」

少し振り向いて声をかける。
以前なら多少なりとも音が返ってきた。
それも今はもう無い。

今この家にいるのは亜智一人だから。

「うしっ!」

再び気合いを入れて家を出た。



渋谷の駅前。
最初にひとみを見た場所に、今日もひとみが最初の頃と何も変わらずそこに立っていた。

何度見ても可愛い…。

それしか無い。

ひとみが亜智を見つけて駆け寄って来た。
変わった事と言えば、こうして笑顔で駆け寄って来てくれる仲にはなったと言う事だけた。

「亜智さん!」
「ごめん待たせたか?」
「そんな事は無いです。それより。」

ひとみの視線が頭のてっぺんから足の先までを通る。

「…変か…?」

不安になって思わず訪る。

「そんな事無いです!むしろ…」

ひとみの頬が可愛く染まる。
そんなひとみを見て亜智は嬉そうだ。

「良かった、ひとみが嫌がったらどうしようかと思ったんだぜ。」
「全然嫌じゃないです!でもどうしてスーツなんですか?普段の格好でも平気なのに。」







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