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□ビターテイスト
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「泣かすぞ。」


「ヤメテー」


片言の言葉にさっきより強く頭突きが返ってきた。


「痛い。」


地味に痛くて自然と涙声になった。
文句を言ってやろうと思って身体を少し離せばにやりと笑う良則と目が合った。


「本当に泣かす気?」


「そんなわけないだろ。」


澄ました顔が憎らしくて、腕を伸ばしてメガネを取ってやった。
なにやってんだ、コイツ?みたいな顔をしている良則を尻目に私はそれを掛ける。
やっぱ度が強いと思っていると顎を掬い上げられ、良則を強制的に見るハメになった。
度が強くてあんま顔が認識できない。
そう思っていたら唇に何かが重なった。
いや、“何か”なんてぼかして言ったけど何かは考えなくても分かる。
というかよくメガネ掛けてるのにできるな。
感心していたらわざとらしいリップ音と一緒に良則が離れた。
それと同時にメガネが外された。


「俺はお前のこと十分甘やかしてると思うぜ?」


「こんな風に」と言いながらメガネを掛け直す良則はどや顔で負かされた気がした。


「......バカじゃないのっ」


顔を逸らせば小さく笑い声が聞こえて、頭を撫でられた。
口の中にほのかな苦みが広がったままで年甲斐もなく顔が赤くなってしまった。






ビターテイスト


嫌いになれないんじゃなくて嫌えないほど好きになってるの




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