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□忌々しいくらい眩しい貴方
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達海のプレミアデビュー戦

相手選手が衝突して倒れた達海にとって現役最後となった試合

スタジアムの一番いい席で観ていた私は呆然としてそれを見送ることしかできなかった。


「達海、」


―――502号室

午後の暖かな日差しが差し込むその部屋が達海の入院している場所だった。
色とりどりのガーベラを持って顔を覗かせれば私の声に反応してこちらを見ていた。


「あと10日だって」

「......そう。じゃあ、散歩に連れてってね。」

「それって観光の間違い?」

「違うわよ。私が行きたいのは散歩なの。」

「ふーん?」


達海は入院中もいつもと変わらない調子で私に笑い掛けている。
私もそれに答えて笑い続ける。
今日も笑顔で話ながら花瓶の花を変えた。

達海が泣いたところを私は一度も見たことがない。
怪我をしてからずっとだ。


「今日はね―――」


毎日の日課になった午前の出来事を話し始めれば達海は優しい笑顔で聞き入ってくれる。


「ねぇ、」

「ん?」

「好きよ。達海の全部が」

「なんだよ急に」


照れ臭そうに笑う達海に私ははにかんだ。

ねぇ、達海
私、あなたが笑っている顔が好きよ。
困ってる顔もイタズラを思いついた顔もいじけた顔も全部全部
(サッカーをしてる時の顔ももちろんだけど)
けれど今はそれらの全部が私を思って、痛いくらいの優しさだけで向けられている。


「俺も好きだよ。」


ねぇ、達海
私、そんなに頼りない?
確かに重りを軽くして上げられないかもしれないけど、聞くくらいなら私にだってできるよ。


「お前が傍にいてくれるだけで俺は笑ってられるからね。」

「ホント?」

「ホントだよ。」


けど本音で話せない私が一番悲しいの。

笑う達海に私も笑い掛けてキスをした。


「お前、今日はホントに変だな。」


そう言って笑う達海に「そんなこと言わないでよ。」と言いながら笑った。






忌々しいくらい眩しい貴方


嘘で固められたそれを私は溶かすことすらできず目を瞑って笑うだけ












あとがき
GK企画夢「白昼夢」さまに提出させていただけます><

ホントは明るいのを目指していましが見事に真逆になってしまいましたorz
そしてタイトルにあまり沿えていない気がしてなりません。
何から何まで申し訳ありません。

けど悩でいる間も楽しかったです。
思い合っていても擦れ違う2人
まさに俺得←

2011/03/09/00:08


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