短編

□臆病者
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ただ恐いだけなんだ

ひとりになりたくないだけ‥






臆病者









ただ恐かっただけ


自分の大切なものが腕からすり抜けていく感覚が嫌だった



みんな、僕をひとりにするんだ



ひとりにはなりたくない、


やっとたくさん大切な人ができたのに


人を愛することを覚えたのに


さよなら、なんてしたくない



けど、さよならしないといけないんだね



みんな、去っていく



僕はただその背中を見つめるだけ



悲しい、辛い、苦しい




ただ見つめるだけ




呼び戻し方をしらないんだ


どうしたら止まってくれる?



時間が止まればいいのに


僕の大好きな時間が永遠に続けばいいのに



ただ、臆病なんだ



僕には歩みを止めさせる術と勇気がないんだ



見つめるだけ、いつも



みんな、去っていく




呼び止めたい、行かないでほしい


ここにいてほしい



ずっと僕の隣にいてほしい





ただ臆病なんだ



大切なものを守る術も止めさせる術もしらないんだ



大切なものなんかじゃない




ただ、誰かにすがりたいだけなんだ



こんなの我が儘をいっている子供と大差ない


それでも縋ることに依存するんだ



今日も戯れ言を吐く



“僕は臆病者なんだ”




END
 

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