短編

□愛しむ
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魔女がいました


魔女は何万何千年と生き長らえました








愛しむ









魔女は何万何千年と生きながえた



そうして彼女は未だに人間という存在に疑問を持っている




彼女は魔女


その名につられて願いを叶えんとするものがくることがたくさんありました



魔女は願いを叶えました


なぜなら魔女は暇だったからです



魔女は退屈が己の死に値すると考えていました


彼女は退屈しのぎに人間に魔法具を貸しました



道具を与えた人間の望みは愛する者と未来永劫、いっしょにいるというものでした



だから彼女は永遠に愛しえる道具を与えました


ブローチのような形のものでした


それを所持しているだけでその恋人たちは永遠にいられるというなんともロマンチックなものでした



しかし彼女はそれにも興味は持てずやすやすと人間に貸しました




ーーーーーーーーーー





その数日後


彼女は魔法具を貸した人間のもとに現れました


現状は“予想”通りでした


そこに広がるのはバラより真っ赤な海


人間たちは願いを叶えました




未来永劫、いられる



この世で無理ならあの世で結ばれたようです




人間はなんとも愚かなんでしょう




彼女は少し朱に染まったブローチを拾い上げました



『いることで苦しいなら別れてしまえばいいのに‥』


冷酷な瞳で死体となった恋人たちを見据える



『そこまでして意味はあるのでしょうか‥?』



ニヤリと嫌らしく三日月のように微笑み



『まぁ‥願いは叶ったでしょうね』





フッ、と笑みをもらし彼女は闇へと消えていった




END
 

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