宝物の夢
□夢の色
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沖田の部屋に現れた彼女は、最近入隊した千鶴より少し前にやってきた。
武士の役に立ちたいと懇願してきた。
腕前はからっきし駄目であったが、その熱意と医療技術の高さを評価された。
今は、医療隊として活動している。
今は仕事中の筈の彼女が何故此処にいるのだろうか。
疑問の答えは彼女の格好を見れば一目瞭然だった。
上気した頬。
少し乱れた髪に、服。
そして、手元には大縄。
「…遊んでた子供にでも訊かれた?」
「よ、よく解りましたね!!正解ですよっ」
興奮仕切った様子でいう彼女に苦笑して答えた。
「解るよ…だって、ほら。君の格好」
そう言って指差す。
「…−ぁ」
気づいた様に慌てて身なりを直している。
久しぶりに垣間見た女の子の姿。
普段の彼女は特別待遇を嫌って男装している。
今だって、男の姿になっているが…仕草は変えられないものがあるようだ。
「で?どんな風に訊かれたの?」
顔だけ向けるように訊ねた。
「いや、始めは何時もの様に遊んでたんですが…もう解散って時に急に螢君が言ってきたんです。『白昼夢を知っているか』と」
「螢…か」
螢とは、沖田が一緒に遊んでいた子供の1人だ。
彼は誰よりも博識で居たいと思っている、いわば、学者気質だった。
きっと、日常の会話で耳にして興味を示す対象となったのだろう。