スキビ!
□AAA
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「キョーコ。コーヒー入ったよ」
「ありがとうございます。蓮さん」
「何見てたの?」
「いえ、雨だなぁ…と思って」
「雨?」
薄いレースカーテンの奥では、シトシトと静かに雨が街を濡らしている。
「あぁ、気づかなかった。どうりで肌寒い訳だ」
今日は珍しく二人一緒の一日オフ。
昨夜、蓮のマンションにお泊りしたキョーコは、気怠い身体を持て余しながらリビングのソファーで、らしくないだらだらとした朝を過ごしていた。
「何処か行く?」
「んー…そうですねぇ…」
蓮のパジャマを上だけ素肌に羽織り、ぶかぶかの余った袖で掌をガードしつつ、熱々のマグカップを両手で包む。
ふぅふぅと熱を冷ましながら甘いカフェオレをこくんと一口。
「おいしい」
優しい甘さにふにゃりと笑うキョーコに、蓮は目眩がしてくらりと頭を揺らす。
「蓮さん?」
「…キョーコさん、可愛い過ぎます…」
「何が?」
分からないと首を傾げるキョーコ。
「いや、それが…」
全て男のツボですよ。お嬢さん…。
こんなに可愛い生き物、どうしてくれよう。
「キョーコ、提案なんだけど」
「はい?」
「今日は雨だし、一日部屋でのんびりしてようか」
「……蓮さんが破廉恥な事ばかりしないのなら」
上目使いで睨むキョーコに、早くも理性が崩壊寸前な蓮は、目元を染めてそっぽを向く。
感情を押し殺す節がある蓮がキョーコにしか見せない子供のような表情。
「ふふふ。じゃあ、午前中は先生の新作DVDを見て、お昼はパンケーキとスープ。午後はのんびりお昼寝…が良いです」
「姫の仰せのままに」
やや大仰に蓮が傅いた。
そんな姿も様になっていて格好良い。
「……蓮さん。雨もいいですね」
「外に出ない言い訳にもなるし?」
「二人でくっついてる言い訳にもなりますし」
キョーコは蓮の隣に腰を下ろし、ぴとりと身体を寄せる。
「これで、肌寒さも解消です」
頬を染めて笑うキョーコに、予定がずれ込んだのはもはや仕方のない事だった。
−−こんな雨の甘い朝−−
FIN