スキビ!
□キラキラ
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『愛は何色だと思いますか?』
「えーと?」
キョーコは雑誌取材の事前アンケート用紙と睨めっこする。
愛は何色…?
「キョーコ?どうしたの?」
先程浴室に向かったばかりの蓮が上半身裸でキョーコの顔を覗き込む。
シャンプーとボディソープが爽やかに香り、既に同じ香りを纏ったキョーコの心臓が跳ねた。
「蓮さん!ちゃんと服着て下さい!!」
「何を今更…」
もう、散々見てるでしょ?
「〜〜〜…」
キョーコが何時までもその手の事に慣れないのを知っていて蓮は言う。
天然いじめっ子健在だった。
むしろ交際し始めてから磨きが掛かったかもしれない。
蓮の髪から雫が滴りおちる。
それはやけに艶めかしく、目の毒なのと風邪をひく危険性からキョーコは蓮の肩に掛かったタオルを手に取り、座るように促した。
「ちゃんと湯舟に浸かったんですか?」
「キョーコが入った後のお湯だし、浸かったよ?」
「…そんな笑顔で言われても、内容は限りなく変態臭いですよ…」
キョーコは呆れながらも、蓮の細くてしなやかな髪を傷付けないように優しくタオルドライする。
「俺はキョーコ限定で変態だから」
「断言されても…」
「イヤ?」
振り向いた蓮の目は捨てられた子犬のようで、演技だと分かっているのに可愛いと思う気持ちが押さえられない。
あー!!もう!!
可愛いじゃない!!
狡いわ!!
「………髪位、乾かしてから出てきてください」
「キョーコと少しでも長く居たい。それにこうしてキョーコに髪拭いて貰うの凄く好き」
蓮はキョーコの手を取りちゅっ、と音を立ててキスをする。
……負けました……
キョーコの顔が赤く染まる。
髪の水分をほぼ吸い取ったのを確認すると、そのタオルを蓮の頭に被せ、キョーコは後ろから蓮に抱き着いた。
「キョーコさん?大変嬉しいのですが、出来れば前からお願い出来ますか?」
前に回されたキョーコの腕をとんとん叩きながら、俺にも抱きしめさせて?と甘える蓮。
「駄目です!蓮さん、色々狡いんだもの!!」
そうは言われても、照れるキョーコが蓮は見たくて仕方が無い。
「これ何?」
机の上の紙を蓮が指で弾く。
「え?」
「隙有り」
キョーコが気を逸らし腕を緩めた隙に、蓮はくるりと自分の前へと引き寄せて、膝の上に座らせた。
「俺の勝ち」
「ほんっっっとに、狡い!!」
「仕方ないよ。キョーコが可愛いんだもの」
唇以外の場所に落とされるたくさんの優しいキス。
唇にしてしまえば行為はエスカレートしてしまうから、そこはまだ我慢する。
「で?これ何?」
「…アンケート用紙です」
「ああ。雑誌の?確か、ドラマの番宣も兼ねてるやつだよね?」
「ええ…。でも質問内容が抽象的過ぎて何て答えれば良いのか困っちゃいます」
「愛は何色だと思いますか…か」
キョーコの次のドラマは蓮との共演作で、兄妹なのに互いに惹かれ合い、葛藤する恋愛色の強い物だった。
兄が蓮でキョーコが妹。
メインは恋愛だが、兄妹の住む下町のご近所を巻き込んだドタバタコメディも含まれている為、シリアス過ぎない現場に二人は楽しく仕事をしている。
二人が付き合っている事は公表していないものの、息のあった演技とすれ違う恋心にスタッフは絶賛し、前評判も上々だった。
「何色だと思いますか?」
「うーん。キョーコ色…かな?」
蓮にとって愛=キョーコだから。
「もう!!真面目に答えてください!!」
「失礼だな。至って真面目なのに」
誘ってるの?
キョーコが尖らせる唇が可愛くて、とうとう唇へキス。
柔らかくて、同じ歯磨き粉の味。
「今からたくさん証明してあげる」
二人の夜は甘く更けていくのだった。