スキビ!

□可愛いひと
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本当に些細な事だけど、俺しか知らない愛おしい君の癖。



「キョーコのペットボトルの飲み方って、変わってるよね?」

風呂上がりのキョーコがこくこくとペットボトルのミネラルウォーターを飲んでいる。
そんな姿を、愛おしそうに見つめていた蓮が突然そう切り出した。

「へ、変ですか?」

自覚があるのだろう、キョーコは恥ずかし気に両手でボトルを持ち直し、眉尻を落とす。

蓮を見つめる目は角度的に上目使いとなり、凶悪なまでに可愛いらしい。

「変ではないよ?」

蓮は含み笑う。

「家と外で飲み方違うよね?」

「違う、というか…もう、癖…ですね…。やだ…コップ持ってこよ……きゃっ!!」

立ち上がろうとするキョーコを蓮は無理矢理抱き寄せ動きを封じる。

胡座をかく蓮の膝に横抱きにされたキョーコは風呂上がりで薄桃に染まる頬を更に赤くした。

「蓮さん!!水が零れたらどうするんですか!!」

「水だから大丈夫。すぐ乾くよ」

宝物を包むみたいにきゅうとキョーコを抱きしめる蓮に何も言えなくなってしまう。

「何で癖になったの?って聞いて良い?」

おでこをこつんと重ね、息がかかる程の至近距離。
カラーコンタクトを外した蓮の瞳は妖しく輝き、全てを見透かしているようで、キョーコの胸は苦しくなる。

これは悪い魔法だわっ!!
何て強力な魔法なのっっ!!?

見つめ返す事が出来ずに思わず目を泳がせる。

「あまり…言いたくないデス…」

ぎこちなくそう告げた唇に重なる蓮のそれ。

「んんっ…」

もう何度繰り返されたか分からない、深く甘いキスは、いつでもキョーコを翻弄し、最後には蓮の成すが儘になってしまう。

「…ねぇ。何で?」

力を無くし、くてんと蓮に身を預けるキョーコの手からペットボトルが奪われた。

「…汚いって…言われて…」

ぼんやりした思考の中でキョーコは過去を思い出す。

「私、さっきみたいにこうやって…」

蓮の手に収まるペットボトルに自らの手を添え、ボトルの口をぱくんと咥えると、ゆっくり傾けてこくんと一口水を飲む。

「ボトルの口を全部、口に入れて飲んでるんですけど…中学の時に、偶然それを見た子が「変だ!最上さんの飲み方汚いっ!!」って言いはじめて…」

キョーコはすりすりと蓮の手に頬を寄せる。

「実際、口を付けて飲むと口内の雑菌が飲み物に移るみたいで…でも、どうやって飲めば良いのか分からないから、自分以外の人がいる場所では皆の飲み方を真似て飲むようになって…」

ボトルに口を付けず、注ぎ込むように水を口に含む。

潔癖な女子中学生がやっていたペットボトルの飲み方。
確かにボトルの口にグロスやリップは付かないし、合理的だけど零しそうでちょっと怖い。
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