この魂の呟きを

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「アインス、封印ってどうやって解くの?」
その言葉にアインスは面倒そうに弥琴の刀を手にとる。
何をするのだろうかと見ているとアインスは弥琴の刀を両手で持って、差し出すような形で石碑の前で膝をついて座った。
「刀をこうやって持って、「解」っつえばいい」
そう言って刀を弥琴に渡す。

案外簡単なものだなと思いながら、弥琴はアインスのした通りに行う。

「解!」

弥琴が叫んだ瞬間、石碑が光ったと思うとフワリと若い女性が現れた。

年の頃は二十代半ば、長く色素の薄い髪が乱れていた。
どこかボンヤリとしていて、トロンとした目が印象的だが、同時に頼りない印象も受ける。

「フタバ」
アインスが彼女を呼ぶ。
彼女はまだ覚醒しきっていないような目でアインスを見た。

「あー…アインスか」
感情のこもっていない声でフタバが呟く。チラリと弥琴を見て彼女はため息をついた。

「相変わらずね、アインス。貴方は必ず御事側につくのね」
独り言のように呟いて、フタバは面倒そうに髪の毛をかきあげる。
フタバの言葉にアインスの顔が歪む。


フタバの"御事側につく"という言葉に弥琴は違和感を覚えた。
守護者は皆、御事の味方ではないのか。変革を阻止するためにいるのではないのか。
ずっと弥琴は守護者は皆自分の仲間になるものだと思ってきていた。

――守護者は刹那側につくこともあるのか?


アインスに尋ねようとする前に、フタバが気だるそうに叫んだ。まるで駄々をこねる子どものように彼女は不満を晴らす。

「アタシはもう、守護者で生きるのなんてもう嫌。御事の側にいたらずっとアタシは死ねない!」

弥琴はドキリとする。
自分が酷く嫌な汗をかいていることに気づいた。
ツゥッと背中を汗が流れて気持ちが悪い。
よくわからないけど、とてつもなく嫌な気持ちがする。

――これは、既視感だ。



「バイバイ、アインス。アタシは刹那側に行くわ」
そう言ってフタバは石碑をタンッと蹴るとフワリと宙に浮かび見えなくなった。
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