この魂の呟きを

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「ぷはっ」
どうやら意味もなく息をとめていたようだ、と弥琴は非常識な状況にも関わらず冷静に分析する。
いや、こんな状況だからこそ無駄に冷静になれるのかも、とも弥琴は思う。

いつの間にか自分は地面に寝転んでいたようで、制服のあちこちに土がついている。
これ洗ったら落ちるかなぁと思いながら制服を叩く。

「って…土?」
普通地面はアスファルトではないだろうか。
グラウンドや畑に落ちたならともかく、どうやら広い道のようなのに舗装が一切されていない。

辺りを見回してみると、田んぼに舗装されていない道、茅葺きの建物。あと、なにか神社のようなものも見える。左手は山に遮られているが、右手は田んぼで覆い尽くされている。
そして、現代にあるはずの電柱が一本も見当たらない。
なんだか昔にタイムスリップしたみたいと弥琴は思った。


「ふぅん…貴方が今代の"御事"ですか」
いきなり空から声が降ってきて、慌てて空を見る。
電線に遮られていない、雲一つない空。
そこには一人の少年が浮かんでいた。

白いYシャツに黒いズボン。いかにも夏用学生服と言わんばかりの服装に身を包んだ彼は本当にフワフワと浮いている。

「え…な、はぁ!?」

少年の周りには彼を浮かしている装置などは見受けられない。
これでクレーンとかあっても私は困るけどね、と弥琴は内心ツッコミを入れる。

だが、ただただ非現実的なその様子にこれはタイムスリップではないのでは?と弥琴は頭をひねる。


「ようこそ、ここは貴方が地球と呼ぶ世界と対になる世界。そうですね…貴方の現実世界を地球の表側だとすると、こちらは地球の裏側です」
早口でまくし立てられて弥琴は混乱する。

どうやら有難いことに状況の説明をしてくれているのだろうが
、急にそんな情報量を詰め込まれればパンクする。

地球の裏側って何?

「え…ちょっと待って」
状況が掴めない、と言おうとした瞬間。
視界の中、空から急に人間が降ってきた。

ドォォン!

大きな音を立てて地面に落ちる。嫌だなぁ私もあんな風に落ちてないよね、と急に弥琴はドキドキした。

土煙が舞って、視界が一時遮られる。
やっと落ちてきた人の姿を確認して、弥琴は動揺する。


「しょう…き?」
弥琴が驚いているのを見て、空に浮いている彼はクスリと笑う。

「へぇ…彼が今代の"刹那"ですか」
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