この魂の呟きを

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弥琴とアインスは三の国に入ってすぐの村で宿を探す。
国境付近ではこの村が一番大きいため、旅人が多く見られる。
特に二の国に行く者は食料や寝袋など多くの荷物を抱えていた。
確かに二の国に行くなら、それくらいの荷物は必要だろうと彼らを見ながらボンヤリ弥琴は思う。


なんとか見つけた宿は二の国のものに比べれば幾分マシではあったが、それにしてもお世辞にも綺麗とは言えなかった。
板張りの床に並べられた簡素な二つの布団。
窓際に申し訳程度に置かれた机は使われていないのか埃が積もっている。

埃があちらこちらに転がっており、なんだか空気が悪い。
ゲホゲホと咳き込むとアインスが不思議そうに弥琴を見た。

「風邪か?」
「ううん、埃っぽくてむせたの」

その言葉にアインスが顔をしかめるので、弥琴はまずいことを言ったかと焦った。

「…ここが埃っぽいっつうんだったら、三の国中央部はもっと大変だぞ」

アインスが言うには三の国北部の砂漠から風に舞って砂が飛んでくるらしく、三の国中央部ではかなり被害があるのだという。

「あちゃー私気管支弱いんだよね…」
昔から空気が悪い所に行くと決まって炎症を起こしていた。


しょんぼりとしている弥琴の頭に突然ポスンと手を置かれたかと思うと、ガシガシとなでる。

「…アインス?」
乱暴だが優しい手つき。
不思議に思って弥琴がアインスの顔を覗き込む。

いささかボンヤリした様子のアインスは自分のしていることを自覚すると、みるみる顔が真っ赤になる。

「どうしたの?」
いつもとは違う彼の様子に弥琴は問う。

「なんでもねぇ!」
明らかに何かあるはずの様子に弥琴は首を傾げる。


だがどうしたのという暇もなく、アインスが布団にもぐりこんで弥琴に背を向ける。
何も聞くなと全身で拒絶するアインスにため息をついて弥琴も自分の布団にもぐりこんだ。
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