この魂の呟きを

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ガラリと扉が開く音がする。
「いらっしゃいませ!」
大きく挨拶をして、笑顔。

弥琴は今、食堂で働いている。



アインスと二人、麓の村に訪れたのは三日前。
田んぼと山に囲まれ、村の真ん中にはまっすぐ続く大きな道が存在する。村には割と店が多く、活気があった。
なんでもこの村は二の国への街道沿いで農作業に従事しながら商売を営む者が多いのだと言う。

村人はいかにも江戸時代の日本といった風な服装で、着物によく似た服を着ている。
ここはやはり日本に文化が似ているのだろうか、なんだか本当にタイムスリップしたようで変な感じがする。

なのになぜアインスはそんな日本らしくない服装なのだろう、弥琴は心の中で呟いた。


アインスの長い尖った耳を見て村人達は驚き、彼を歓迎した。
御事に関しても、この村では割と信仰が厚く、一気に村は賑わった。

だが、いくら信仰があるとはいえ御事とアインスは村人にとっては架空の存在。
急に目の前に現れた二人にお金や食料をおいそれと渡すような人はなかなかいない。


おずおずと弥琴が路銀のために働きたいと願い出ると、食堂を営んでいる夫婦が弥琴に救いの手を差し伸べた。
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