この魂の呟きを

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「相変わらず嫌らしい笑顔だな、裁」

どこからかクナイが飛んできて、うわぁなにこのマンガみたいな状況と弥琴は思う。
だが、そのクナイを普通に人差し指と中指でシュッと受け止める裁にも目を丸くする。

いや、もはや私が立ち入れる状態じゃないよ…。


クナイを投げたであろう人物が目の前に現れる。
少し冷たい印象の男、年の頃は20歳前後のようだ。
黒い髪に白の帽子をかぶり、切れ長の深い紫色の瞳。日本ではあまり見かけないような独特な服装。ポンチョのようなものがヒラヒラとしている。
脇にやたら長細い包みを抱えてよく動けるなぁと弥琴は感心する。
しかし何よりも印象的なのは人間では有り得ないほど尖った耳。

…コレ何ていう生物ですか。


急に黒髪の彼は弥琴の方を見ると、全身を一瞥した。
その鋭い瞳に弥琴は嫌なドキドキ感に襲われる。
彼は脇に抱えていた長細い包みを開き、中身を取り出す。

「お前が御事だろ。ほら」

ガシャン。
自分にはやたら重いもの
が放られる。
受け取ってみて唖然とする。
「刀…?」
まさしく歴史上で出てくるような立派な刀。国宝ですか、と言いたいような素敵なかっこいいもの。

しかし、弥琴は生憎剣道部でもなんでもない。刀について全くシロウトだ。

「いや…私」
刀は無理、と言おうとした瞬間に身体が勝手に刀を抜く。
本当にこれで人が斬れるのかと言いたくなるようなキラキラした刀身。

そのまま自分の意思とは関係なくタンッと弥琴は軽く地面を蹴ると、自分の身体能力では考えられない勢いで生起に斬りつけようとしていた。

「しょ…きっ」
逃げて、と言おうとするが声が出ない。

当たる、そう思った瞬間に弥琴は目をつぶった。
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