この魂の呟きを

□1-1
1ページ/5ページ

永峰弥琴、高校二年生。
今日もいつものように授業を受けていた。

窓際後ろから二番目の席。
今日は快晴で差し込んでくる日差しが暖かい。
春は日差しが柔らかいから好きだなぁと思いながら窓の外を見る。

教室の窓からはちょうどグラウンドを一望できる。
今体育をやっているのは隣のクラスか、と弥琴は無駄に良い視力を発揮する。と言うか、よく見知った人物がサッカーボールを追いかけて走っていたからだ。
「生起…」
私が彼を見間違えるはずがない。それに生起とよく連んでいる連中の姿も見えた。


羨ましいな、そう思っても私はなかなか彼らの輪には交じれない。
男と女、どうしてこんなに違うんだろう。

弥琴はどうしようもないもどかしさに囚われる。


ハッと意識を黒板に戻すと、膨大な量の数式が羅列されていた。
「…であるから運動方程式ma=Fは」
先生の声がどんどん遠く聞こえる。
あー眠いなぁとか思っていると、急に音が聞こえなくなった気がした。私寝てた?と思って、慌てて顔をあげる。
先生も生徒も誰一人として動かない。

「え…?」

なにこれ、そう思った瞬間、ヌルリと弥琴は床に飲み込まれた。

「ちょっ…!」

ズブズブと床はまるで泥のように弥琴を捕らえて離さない。
このまま飲み込まれたら下の三年生の教室の天井から足が生える!とか妙に現実的なことを考えたりして弥琴は抵抗する。

トプン。
床が波打つ音が聞こえた。


抵抗空しく、底無し沼のように床は彼女を全て飲み込んだ。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ