SHORT

□眼前に君
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彼は急に立ち止まったかと思うと、ふいに後ろに傾いてきた。

「うわぁっ!」

ドサドサドサッと大袈裟な音がして、二人して倒れこむ。
自分の上に彼が乗っている状況だがそれどころではない。

「いったぁ…」
倒れたときに咄嗟に頭を上げたため、しこたま肩を打ちつけた。
倒れる元凶となった彼は未だに目を覚まさない。
体格が良い分、自分より数段重い彼の下から出るのにはかなりの労力が必要だった。(未だに彼の頭は自分の膝の上にある)

「おーい」

なんでいきなり倒れるんだ、とか、どうして自分の上に倒れるんだ、とか色んな文句を言ってやりたかったけれども、疲れきっている彼のことを思うと、何も言えなかった。(というか寝ているし)

張り詰めていた緊張の糸がほぐれた途端、これだ。


色々立て続けに仕事が入って、夜もまともに寝れていなかったのは自分も知っている。
それが一段落して、家路につこうとロッカーに一緒に向かったのが間違いだった。

「どうしよう…」

このまま廊下に二人して座りこんでいるわけにもいかない。
ましてや男女二人だ。
良からぬ噂が立てば自分にも彼にも迷惑だ。
意を決して、彼を起こすことにする。

「起きろぉぉお!」

耳許で思いっきり叫べば、顔をしかめて目を薄く開く。





彼が自分の置かれた状況に驚いて目を見開くまであと3秒。



TITLE BY 遜色

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